アスピリンの効果、用量や体重で大きな差/Lancet

提供元:
ケアネット

アスピリンの効果、用量や体重で大きな差/Lancetのイメージ

 アスピリンの血管イベントやがんの抑制効果には、用量や患者の体重によって大きな差があり、良好な効果を得るには、より個別化された治療戦略を要することが、英国・オックスフォード大学のPeter M. Rothwell氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年7月12日号に掲載された。全例に同一用量を一律に投与するone-dose-fits-allアプローチでは、アスピリンの長期的な心血管イベントの予防効果はわずかであり、標準的な用量は体が大きい患者には過少で、小さい患者には過剰であることが報告され、他のアウトカムについても同様である可能性が示唆されている。

体重別、用量別の効果を、個別患者データを用いて解析
 研究グループは、心血管イベントの1次予防におけるアスピリンの有用性を評価した無作為化対照比較試験の個別患者データを用いて、患者の体重別(10kgごと)、アスピリンの用量別(低用量:≦100mg、高用量:300~325mgまたは≧500mg)の効果について検討した(英国ウェルカム・トラストなどの助成による)。

 得られたデータを年齢、性別、血管リスク因子で層別化し、アスピリンによる脳卒中の2次予防の試験で検証した。さらに、大腸がんおよび全がんの20年リスクに及ぼすアスピリンの効果と、体重および用量との関連について検討した。

 日本の2件の試験を含む10件のアスピリンによる1次予防の試験(11万7,279例)が解析に含まれた。体重には最大と最小で約4倍の差があり、各試験の体重の中央値には60.0~81.2kgの幅が認められた(p<0.0001)。

体重70kg以上への低用量投与で、心血管死のリスクが33%増加
 低用量アスピリンの1次予防試験の統合解析では、75~100mgのアスピリンによる心血管イベントの抑制効果は、体重が増加するに従って低下した(pinteraction=0.0072)。体重50~69kgの集団ではベネフィットが認められ(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.65~0.85、p<0.0001)、とくに連日投与(0.68、0.56~0.83、p=0.0001)の効果が高かったのに対し、体重が70kgを超えるとベネフィットは消失した(0.95、0.86~1.04、p=0.24)。

 さらに、体重70kg以上の集団では、低用量アスピリンにより初回心血管イベントの死亡リスクが増加した(オッズ比[OR]:1.33、95%[CI]:1.08~1.64、p=0.0082)。

 高用量アスピリン(≧325mg)では、体重との間に低用量とは逆の関連がみられ(pinteraction=0.0013)、心血管イベントの抑制効果は、体重が最も重い集団のみで認められた(pinteraction=0.017)。

 これらとほぼ同様の知見が、男性、女性、糖尿病罹患例、脳卒中の2次予防試験にもみられ、用量と身長にも類似の関連(pinteraction=0.0025)が認められた。

 アスピリンによる大腸がんの長期的なリスクの低減効果にも体重依存性が確認され、体重が重い集団では効果が消失した(pinteraction=0.038)。低用量アスピリン(75~100mg)では、体重70kg未満の集団は大腸がんのリスクが低かった(HR:0.64、95%CI:0.50~0.82、p=0.0004)が、70kg以上の集団では効果はなかった(0.87、0.71~1.07、p=0.32)。これに対し、高用量(≧325mg)では、体重80kgまでリスク低減効果が認められた(0.69、0.55~0.87、p=0.0014)。

 体重で層別化すると、用量が過剰になると有害な作用が増加することが示された。突然死のリスクは、体重が軽い集団では用量が増えるに従って増加し(pinteraction=0.0018)、アスピリン75~100mgの投与を受けた体重50kg未満の集団では、全死因死亡のリスクが増加した(HR:1.52、95%CI:1.04~2.21、p=0.031)。

 70歳以上では、アスピリンによってがんの3年リスクが増加し(HR:1.20、95%CI:1.03~1.47、p=0.02)、とくに体重70kg未満の集団でリスクが高く(1.31、1.07~1.61、p=0.009)、結果として女性のリスクが高かった(1.44、1.11~1.87、p=0.0069)。

 著者は、「低用量アスピリン(75~100mg)による血管イベントの予防効果は体重70kg未満の集団に限られたのに対し、高用量では70kg以上の集団のみで有効であった」とまとめ、「がんを含む他のアウトカムへのアスピリンの効果にも体の大きさと関連がみられたことから、one-dose-fits-allアプローチは適切ではない可能性があり、より詳細に個別化した戦略が求められる」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)