飲酒と心血管疾患・脳卒中、関連は逆?/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2018/06/11

 

 アルコール摂取は、非致死的な冠動脈疾患(CHD)と負の相関がみられた一方、複数の脳卒中サブタイプとは正の相関が認められたことが、WHO国際がん研究機関のCristian Ricci氏らによる検討の結果、明らかにされた。著者は、「示された結果は、アルコール摂取と心血管疾患(CVD)の関連は種々存在することを強調するものであり、アルコール摂取の低減方針のエビデンスを強化するものである」とまとめている。BMJ誌2018年5月29日号掲載の報告。

ヨーロッパの8ヵ国3万2,549例について前向きコホート研究
 これまで多くの前向きコホート研究では、アルコール摂取に関して、コホート登録時のみ評価がされていた。それらの検討において、中程度のアルコール消費は、CHDの低リスクと関連しており、がんや全死因死亡の高リスクと関連することが示唆されている。また、アルコール消費は全脳卒中の高リスクとの関連が示唆されているが、脳卒中サブタイプに関するエビデンスは限定的であった。

 研究グループは、多施設共同ケースコホート研究で、アルコール消費(ベースラインおよび一生涯について評価)と、非致死的・致死的なCHDおよび脳卒中との関連を調べた。

 ヨーロッパの8ヵ国で被験者を募ったEuropean Prospective Investigation into Cancer and nutrition cohort(EPIC-CVD)内で、CVD決定因子の試験を設定。CVDイベント発生例、および下位コホートを含むベースラインで非CVDの3万2,549例について、非致死的・致死的なCHDおよび脳卒中(虚血性・出血性脳卒中含む)の発生を評価した。

CHDとは負の相関、脳卒中とは正の相関
 発生イベント件数の内訳は、非致死的CHDが9,307例、致死的CHDが1,699例、非致死的脳卒中は5,855例、致死的脳卒中は733例であった。

 ベースラインにおけるアルコール摂取と非致死的CHDには負の相関が認められ、摂取量12g/日増加当たりのハザード比(HR)は0.94(95%信頼区間[CI]:0.92~0.96)であった。

 また、ベースラインアルコール摂取と致死的CHDリスクにはJ曲線の関係がみられた。総アルコール摂取量0.1~4.9g/日群と比較したHRは、5.0~14.9g/日群が0.83(0.70~0.98)、15.0~29.9g/日群が0.65(0.53~0.81)、30.0~59.9g/日群が0.82(0.65~1.03)であった。

 対照的に、非致死的および致死的脳卒中リスクとは正の相関がみられ、ベースラインアルコール摂取量12g/日増加当たりのHRは、非致死的脳卒中が1.04(1.02~1.07)、致死的脳卒中が1.05(0.98~1.13)であった。虚血性および出血性脳卒中別にみても、おおよそ類似の所見が認められた。

 ベースラインアルコール摂取と生涯平均アルコール消費の心血管アウトカムとの関連は、試験が行われた8ヵ国すべてにわたって、おおよそ類似していた。

 CVDイベントリスクへのアルコール摂取と喫煙状態の交互作用に関する強いエビデンスはなかった。

(ケアネット)

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