Immunoscore、大腸がん再発リスクを高精度に予測/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2018/06/01

 

 腫瘍浸潤T細胞の評価により得られる「Immunoscore」は、大腸がん再発リスクの推定において信頼性が高いことが示唆された。フランス・パリ第5大学のFranck Pages氏らが、Stage I~IIIの大腸がん患者を対象とした同スコアの予後予測精度の検証結果を報告した。大腸がんの再発リスクの評価は改善が望まれており、免疫パラメータの導入には、強固な免疫スコアの定量化が必要とされていた。著者は、「今回の結果は、ImmunoscoreをTNM分類の新たな構成要素とすることを支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2018年5月10日号掲載の報告。

腫瘍浸潤T細胞の密度に基づきスコアを開発
 米のがん免疫学会(Society for Immunotherapy of Cancer:SITC)が主導する13ヵ国14施設から成る国際コンソーシアムは、TNM分類Stage I~IIIの大腸がん患者においてImmunoscoreを評価した。まず、患者を学習セット、内部検証セット、外部検証セットに無作為に割り付け、各患者から採取した腫瘍部および浸潤断端部のパラフィン切片の免疫組織化学染色を行い、それぞれのCD3+T細胞および細胞傷害性CD8+T細胞の密度を、デジタルパソロジーを用いて定量化し、4つの密度をそれぞれパーセンタイルに変換して、その平均値からImmunoscoreに分類した(0~25%:低スコア、25~70%:中スコア、70~100%:高スコア)。

 主要評価項目は、再発までの期間(手術から疾病再発までの期間と定義)のImmunoscoreの予後値であった。層別化Coxモデルを用い、潜在的な交絡因子で補正したImmunoscoreと転帰との関連性を解析するとともに、その性能をHarrellのC統計量を用いて評価した。

5年再発リスク、高スコア分類群が最も低い
 計3,539例の組織標本が免疫染色され、品質管理後に2,681例が解析に組み込まれた(学習セット700例、内部検証セット636例、外部検証セット1,345例)。

 学習セットにおいて、Immunoscoreの高スコア群で5年再発リスクが最も低かった。高スコア群14例(8%)、中スコア群65例(19%)、低スコア群51例(32%)で、高スコア群vs.低スコア群のハザード比(HR)は0.20(95%信頼区間[CI]:0.10~0.38、p<0.0001)で有意差が認められた。

 この結果は、内部・外部の2つの検証セットでも確認された。層別化Coxモデルによる多変量解析の結果、Immunoscoreと再発までの期間との関連性は、患者の年齢・性別・Tステージ・Nステージ・マイクロサテライト不安定性・既知の予後因子から独立していた(p<0.0001)。Stage IIの大腸がん患者1,434例では、5年再発リスクに有意差が認められた(高スコアvs.低スコアのHR:0.33、95%CI:0.21~0.52、p<0.0001)。

 Immunoscoreは、米国がん合同委員会(AJCC)および国際対がん連合(UICC)のTNM分類を含むすべての臨床パラメータに関して、リスクへの相対的寄与が最も高かった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 上村 直実( うえむら なおみ ) 氏

国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長

東京医科大学 消化器内視鏡学講座 兼任教授

J-CLEAR評議員