手術関連死、最も少ないのは50代女性外科医/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2018/05/14

 

 手術の技能は、外科医が職歴を重ね、技術や経験を蓄積することで向上するが、手先の器用さの衰えや知識の旧態化により低下する可能性が指摘されている。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校の津川 友介氏らは、メディケア受給者のデータを解析し、年長の外科医による治療を受けた患者は、若年外科医の治療を受けた患者に比べ死亡率が低く、外科医の性別で手術関連死に差はないことを示した。研究の成果は、BMJ誌2018年4月25日号に掲載された。年長の外科医と若い外科医の技能の優劣については相反するエビデンスがあり、最近のカナダの1州で実施された研究では、女性外科医は男性外科医に比べ手術関連死が少ないことが示唆されているという。

4万5,826人の外科医の手術を受けた89万2,187例を解析
 研究グループは、外科医の年齢別、男女別の患者死亡率の評価を目的とする観察研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。

 2011~14年に、米国の救急病院で20種の非待機的大手術(major non-elective surgeries)のうち1つを受けた、65~99歳のすべての出来高方式メディケア受給者を対象とした。

 主要アウトカムは手術関連の患者死亡率とした。手術関連死は、患者と外科医の背景因子および病院の指標変数で調整した、入院中または手術後30日以内の死亡と定義した。
 4万5,826人の外科医(平均年齢:50.5歳、男性:4万1,192人[89.9%]、女性:4,634人[10.1%])による治療を受けた89万2,187例が解析に含まれた。

患者死亡率は、50代の女性外科医が最も低い
 全体の手術関連の患者死亡率は6.4%(5万6,803/89万2,187)であった。外科医の年齢別の調整済み患者死亡率は、40歳未満が6.6%(95%信頼区間[CI]:6.5~6.7%)、40~49歳が6.5%(6.4~6.6%)、50~59歳が6.4%(6.3~6.5%)、60歳以上は6.3%(6.2~6.5%)であり、年齢が高いほど死亡率が低かった(傾向のp=0.001)。

 一方、女性外科医と男性外科医で、手術関連の患者死亡率に有意な差は認めなかった(補正死亡率:6.3 vs.6.5%、補正オッズ比:0.97、95%CI:0.93~1.01、p=0.14)。また、外科医の性別で層別化すると、患者死亡率は男女とも、60歳以上の女性を除き外科医の年齢が上がるほど低下し、手術関連死亡率が最も低いのは50代の女性外科医だった。

 疾患の重症度別の補正手術関連死亡率は、高リスク例では外科医の年齢が高いほど低かった(p=0.01)が、中等度リスク例および低リスク例では有意な差はみられなかった。また、男女間に、重症度別の死亡率の差は認めなかった。

 さらに、手術件数が多い外科医では、年齢が高いほうが手術関連死亡率は低かったが、手術件数が少ないまたは中程度の外科医では、年齢と死亡率に関連を認めなかった。

 著者は、「若年外科医のほうが死亡率が高いという知見からは、外科医の研修終了後の職歴の早期における監視、監督の強化が有用と考えられ、さらなる実証的研究が求められる。また、アウトカムは男女の外科医で同等であることから、手術を受ける患者は外科医の性別にかかわらず、質の高いケアを受けていることが示唆される」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 今中 和人( いまなか かずひと ) 氏

医療法人朗源会 大隈病院

J-CLEAR推薦コメンテーター