死亡リスクが低い飲酒量、ロング缶で週5本まで?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2018/05/07

 

 アルコール摂取の低リスク推奨量は、各国のガイドラインで大きな差があるという。英国・ケンブリッジ大学のAngela M. Wood氏らは、約60万人のアルコール摂取状況を解析し、死亡リスクが最も低い閾値は約100g/週であることを示した。研究の成果は、Lancet誌2018年4月14日号に掲載された。国ごとで低リスク推奨量にばらつきがあるのは、最も死亡リスクが低い飲酒量の閾値の曖昧さや、心血管疾患のサブタイプに関連する、アルコール摂取に特異的な帰結の不確実性を反映している可能性があるためとされる。

*アルコール量の目安:ビール(5%)500mLで20g

19の高所得国の前向き研究83件のデータを解析
 研究グループは、全死因死亡および心血管疾患のリスクが最も低いアルコール摂取量の閾値を明らかにするために、心血管疾患の既往歴のないアルコール摂取者59万9,912例のデータを解析した(英国医学研究審議会などの助成による)。

 19の高所得国の3つの大規模なデータソース(Emerging Risk Factors Collaboration、EPIC-CVD、UK Biobank)から、個々の参加者のデータを収集し、統合解析を行った。83件の前向き研究を施設、年齢、性別、喫煙、糖尿病などで補正して、用量反応関係の特性を明らかにし、アルコール摂取量の100g/週ごとのハザード比(HR)を算出した。

 ベースラインのアルコール摂取量を、週当たりの摂取量(g)で8つの群に分類し、アルコール摂取量と、全死因死亡、心血管疾患全体、心血管疾患のサブタイプとの関連を評価した。HRは、アルコール摂取量の長期的なばらつきの推定値で修正した。

適量は、グラスワイン、1パイントのビールで、週に5~6杯
 登録のベースライン年は1964~2010年で、平均年齢は57±9歳、44%が女性だった。喫煙者は21%で、アルコール摂取量100g/週以上が約50%を占め、350g/週以上は8.4%であった。

 540万人年のフォローアップ期間に、4万310例(血管系:1万1,762例、新生物:1万5,150例を含む)が死亡し、3万9,018例(脳卒中:1万2,090例、心筋梗塞:1万4,539例、心筋梗塞を除く冠動脈疾患:7,990例、心不全:2,711例、他の心血管疾患による死亡:1,121例を含む)が心血管疾患イベントを発症した。

 全死因死亡のHRは、アルコール摂取量が増加するに従って曲線を描いて上昇し、最も死亡リスクの低い摂取量は約100g/週未満であった。これは週に、英国の標準的なグラスワインまたは1パイントのビールで、およそ5~6杯に相当する。

 アルコール摂取量の増加とリスクの上昇に、ほぼ直線的な関連が認められた心血管疾患のサブタイプとして、脳卒中(摂取量の100g/週増加のHR:1.14、95%信頼区間[CI]:1.10~1.17)、心筋梗塞を除く冠動脈疾患(1.06、1.00~1.11)、心不全(1.09、1.03~1.15)、致死的高血圧性疾患(1.24、1.15~1.33)、致死的大動脈瘤(1.15、1.03~1.28)が挙げられた。

 これに対し、アルコール摂取量の増加とともに、心筋梗塞のリスクは低下し、対数線形的な関連がみられた(HR:0.94、95%CI:0.91~0.97)。

 40歳時の平均余命は男女とも、アルコール摂取量が>0~≦100g/週の集団と比較して、>100~≦200g/週の集団は約6ヵ月短く、>200~≦350g/週の集団は約1~2年、>350g/週の集団は約4~5年短縮した。

 著者は、「これらのデータは、現行の多くのガイドラインで推奨されているアルコール摂取量制限値を、さらに低くすることを支持するものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)