固形燃料での料理や暖房、心血管死リスク2~3割増/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2018/04/19

 

 中国農村部では、料理や暖房に使用している石炭などの固形燃料が、心血管系疾患死や全死因死亡リスクを増大していることが明らかにされた。そうしたリスクは、クリーン燃料へ切り替えたり、換気付き料理用コンロを使用している人では低い可能性も示唆された。中国・華中科技大学同済医学院のKuai Yu氏らが、5つの農村部の住民約27万例を平均7.2年間追跡した前向きコホート試験の結果で、JAMA誌2018年4月3日号で発表した。屋内での固形燃料の燃焼は、大量の微細粒子状の汚染物質を生成することが知られている。

固形燃料の料理・暖房への使用を自己申告で調査
 研究グループは2004年6月~2008年7月にかけて、中国の5つの農村部に住む30~79歳を対象に試験を開始し、2014年1月まで追跡を行った。被験者のうち、ベースライン時に自己申告で心血管疾患の医師による診断歴のない27万1,217例を対象に、自己申告による料理と暖房に使う主要燃料の種類や、ベースラインの前の燃料の切り替えや、換気付き料理用コンロ使用の有無を調べた。

 燃料の種類は、固形燃料は石炭、木、木炭で、クリーン燃料はガス、電気、セントラルヒーティングだった。また被験者のうち無作為抽出した1万892例について、ベースラインから平均2.7年後に、ベースライン時と同様の質問を行った。

 主要評価項目は、死亡レジストリを基にした心血管系疾患死と全死因死亡だった。

心血管系疾患死リスク、固形燃料の料理への使用で1.2倍、暖房では1.3倍
 被験者の平均年齢は51.0歳(SD 10.2)で、59%が女性だった。定期的に料理をする人(少なくとも週1回)の割合は66%、冬期に暖房を使う人は60%で、そのうち固形燃料を使う人の割合は、それぞれ84%(15万992例)と90%(14万7,272例)だった。

 平均7.2年(SD 1.4)の追跡期間中に1万5,468例が死亡し、そのうち5,519例が心血管系疾患によるものだった。

 固形燃料の料理への使用により、心血管系疾患死のリスクは1.20倍(10万人年当たりの絶対リスク差[ARD]:135[95%信頼区間[CI]:77~193]、ハザード比[HR]:1.20[95%CI:1.02~1.41])、全死因死亡リスクは1.11倍(338[249~427]、1.11[1.03~1.20])に、それぞれ増大した。

 固形燃料の暖房への使用も、心血管系疾患死リスクを1.29倍(175[118~231]、1.29[1.06~1.55])、全死因死亡リスクを1.14倍(392[297~487]、1.14[1.03~1.26])に増大した。

 一方で、ベースライン時は固形燃料を使用していたが、その後にクリーン燃料に切り替えた人は、固形燃料を使用し続けていた人に比べて心血管系疾患死リスク、全死因死亡リスクともに低下した。料理の燃料切り替えに関する心血管系疾患死に関するARDは138(95%CI:71~205)、HRは0.83(95%CI:0.69~0.99)で、全死因死亡に関するARDは407(317~497)、HRは0.87(0.79~0.95)だった。暖房への使用に関しては、それぞれ心血管系疾患死に関するARDは193(128~258)、HRは0.57(0.42~0.77)、全死因死亡に関するARDは492(383~601)、HRは0.67(0.57~0.79)だった。

 固形燃料を料理に使用した人のうち、換気付き料理用コンロの使用者は、心血管系疾患死・全死因死亡リスクともに低かった。心血管系疾患死に関するARDは33(95%CI:-9~75)、HRは0.89(95%CI:0.80~0.99)で、全死因死亡に関するARDは87(20~153)、HRは0.91(0.85~0.96)だった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)