siponimod、二次性進行型多発性硬化症の身体的障害の進行を抑制/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2018/04/06

 

 スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体のS1P1およびS1P5サブタイプ選択的調節薬であるsiponimodは、二次性進行型多発性硬化症(SPMS)患者において、身体的障害の進行リスクを低下させ、安全性プロファイルは他のS1P受容体調節薬と同様であることが認められた。スイス・バーゼル大学のLudwig Kappos氏らが、siponimodの無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験(EXPAND試験)の結果を報告した。SPMSは、再発とは無関係に障害が徐々に進行し続けることが特徴で、これまで身体的障害の進行を遅延させる効果を示した治療はなかった。著者は、「siponimodはSPMSの治療に役立ちそうである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2018年3月22日号掲載の報告。

SPMS患者約1,650例で身体的障害の進行を評価

 EXPAND試験は、31ヵ国の292施設で、総合障害度評価尺度(EDSS)が3.0~6.5点のSPMS患者(18~60歳)を対象に行われた。被験者を、siponimod群(1日1回2mgを経口投与)またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、最長3年、あるいは事前に定義した身体的障害の進行(confirmed disability progression:CDP)イベントが生じるまで投与した。

 2013年2月5日~2015年6月2日に、1,651例が無作為化を受けた(siponimod群1,105例、プラセボ群546例)。

 主要評価項目は、3ヵ月以上継続するCDPが認められるまでの期間。有効性は最大解析集団(無作為化と試験薬の投与を受けた全患者)で、安全性は安全性解析対象集団で評価し、Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。

3ヵ月以上継続する身体的障害の進行リスク、siponimod群21%低下

 1,651例の患者背景は、多発性硬化症の罹病期間が平均(±SD)16.8±8.3年、SPMSへ移行してからの期間が平均3.8±3.5年で、1,055例(64%)は過去2年間に再発がなく、918例(56%)が歩行介助を必要とした。

 解析集団には、siponimod群の同意が得られなかった1例と試験薬の投与を受けなかった5例を除く計1,645例(siponimod群1,099例、プラセボ群546例)が包含され、siponimod群903例(82%)、プラセボ群424例(78%)が試験を完遂した。

 siponimod群1,096例中288例(26%)、プラセボ群545例中173例(32%)で、3ヵ月以上継続するCDPが確認された(ハザード比:0.79、95%CI:0.65~0.95、相対リスク低下21%、p=0.013)。有害事象の発現率はsiponimod群89%(975/1099例)、プラセボ群82%(445/546例)で、重篤な有害事象はそれぞれ197例(18%)および83例(15%)が報告された。リンパ球減少症、肝トランスアミナーゼ上昇、投与開始時の徐脈/徐脈性不整脈、黄斑浮腫、高血圧、帯状疱疹、痙攣に関しては、プラセボ群よりsiponimod群で多く認められた。心臓への影響は初期の漸増投与により軽減した。感染症や悪性腫瘍の頻度、および死亡率は両群に違いはなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

専門家はこう見る

コメンテーター : 森本 悟( もりもと さとる ) 氏

慶應義塾大学医学部生理学教室 特任講師

東京都健康長寿医療センター 脳神経内科

J-clear会員