尿路感染へのトリメトプリムで突然死リスクは増えるのか/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2018/02/28

 

 尿路感染症(UTI)に対するトリメトプリムの使用は、他の抗菌薬使用と比べて、急性腎障害(AKI)および高カリウム血症のリスクは大きいが、死亡リスクは高くないことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のElizabeth Crellin氏らによるコホート研究の結果で示された。また、相対リスクの上昇は試験対象集団全体においては類似していたが、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬およびカリウム保持性利尿薬を服用していた群ではベースラインのリスクが高いほど、AKIや高カリウム血症の絶対リスク上昇がみられたという。BMJ誌2018年2月9日号掲載の報告。

一般集団を対象に、AKI、高K血症、死亡の発生を他の抗菌薬と比較
 合成抗菌薬のコトリモキサゾール(ST合剤:スルファメトキサゾールとトリメトプリムの合剤)は、突然死のリスク増大と関連しており、そのリスク増大は血清カリウム値の上昇による可能性が報告されている。しかし先行研究は、対象が特定集団(RAS阻害薬服用患者など)であり、交絡因子(感染症のタイプや重症度)の可能性が排除できず、結果は限定的であった。また、トリメトプリムとST合剤のリスクが同程度のものなのかについても、明らかになっていなかった。

 研究グループは、一般集団においてUTIに対するトリメトプリム使用が、AKI、高カリウム血症、あるいは突然死のリスクを増大するかを検証した。

 英国のClinical Practice Research Datalinkに集積されているプライマリ受診者の電子カルテ記録を用い、Hospital Episode Statisticsデータベースからの入院記録データと関連付けて解析を行った。

 対象は、1997年4月~2015年9月に、プライマリケアでUTIの診断後に最長で3日間、トリメトプリム、アモキシシリン、セファレキシン、シプロフロキサシン、またはnitrofurantoinのいずれかを処方されていた65歳以上の患者。UTIの抗菌薬治療14日間でのAKI、高カリウム血症、死亡の発生について評価した。

RAS阻害薬とスピロノラクトンの使用群ではリスクが上昇
 コホートには、65歳以上の患者119万1,905例が組み込まれた。このうち、17万8,238例がUTIの抗菌薬治療を1回以上受けており、UTIの抗菌薬治療エピソード総計42万2,514件が確認された。

 抗菌薬投与開始後14日間のAKI発生のオッズ比(OR)は、アモキシシリン群との比較において、トリメトプリム群(補正後OR:1.72、95%信頼区間[CI]:1.31~2.24)およびシプロフロキサシン群(同:1.48、1.03~2.13)で高かった。

 抗菌薬投与開始後14日間の高カリウム血症発生のORは、アモキシシリン群との比較において、トリメトプリム群(同:2.27、1.49~3.45)のみで高かった。

 しかしながら、抗菌薬投与開始後14日間の死亡発生のORは、アモキシシリン群と比べてトリメトプリム群では高くなく、全集団における補正後ORは0.90(95%CI:0.76~1.07)であった。一方で、RAS阻害薬使用群における補正後ORは1.12(同:0.80~1.57)であった。

 解析の結果、65歳以上で抗菌薬治療を受けた1,000UTIについて、RAS阻害薬使用の有無にかかわらず、アモキシシリンの代わりにトリメトプリムを用いた場合の高カリウム血症の追加症例は1~2例であり、AKIによる入院は2例であることが示唆された。一方で、RAS阻害薬およびスピロノラクトンの使用群では、アモキシシリンの代わりにトリメトプリムを用いた場合、高カリウム血症の追加症例は18例、AKIによる入院は11例であった。

(ケアネット)