PTSDの悪夢、プラゾシンで改善せず/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2018/02/16

 

 α1アドレナリン受容体遮断薬プラゾシンは、慢性心的外傷後ストレス障害(PTSD)に伴う悪夢を軽減することはなく、睡眠の質も改善しないことが、PTSDを抱えた退役軍人を対象とする多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「PACT試験」の結果、示された。米国・VA Northwest Network Mental Illness Research, Education and Clinical CenterのMurray A. Raskind氏らが報告した。プラゾシンは、これまでの無作為化試験で退役軍人のPTSDと関連する悪夢の軽減に有効であることが示唆されていたが、試験期間が15週未満と短く症例数も中規模であった。NEJM誌2018年2月8日号掲載の報告。

患者約300例において、プラゾシンとプラセボで悪夢と睡眠の質を比較
 研究グループは、退役軍人医療センター13施設において、慢性PTSDを抱え頻繁に悪夢をみるという退役軍人304例を、プラゾシン群あるいはプラセボ群に無作為に割り付け、26週間治療した(プラゾシン群152例、プラセボ群152例)。投与量は、最初の5週間で男性は最大20mg/日、女性は12mg/日まで漸増し、10週目まで投与した後、さらに16週間二重盲検下で投与を継続した。

 主要評価項目は、10週時におけるPTSD臨床診断面接尺度(CAPS)のB2「繰り返しみる悪夢」(0~8点:スコアが高いほど頻度が多く苦痛が大きい)、およびピッツバーグ睡眠質問票(PSQI:0~21点、スコアが高いほど睡眠の質が低い)のスコアのベースラインからの変化量、ならびに臨床全般印象評価(CGIC:1~7点、スコアが低いほど改善が大きく、4点が変化なし)である。線形混合モデルを用い、修正intention-to-treat解析を行った。

10週時および26週時とも、両群で評価項目に差はなし
 プラゾシン群とプラセボ群の主要評価項目(10週時)は、CAPS-B2(群間差:0.2、95%信頼区間[CI]:-0.3~0.8、p=0.38)、PSQI(群間差:0.1、95%CI:-0.9~1.1、p=0.80)、およびCGIC(群間差:0、95%CI:-0.3~0.3、p=0.96)であり、いずれも有意差は認められなかった。

 副次評価項目である26週時におけるCAPS-B2およびPSQIの変化量、CGIC、ならびにほかの副次評価項目も、両群間で有意差は確認されなかった。

 10週時における仰臥位収縮期血圧のベースラインからの変化量の、両群の平均差は-6.7mmHgであった。有害事象である自殺念慮の新規発生また増悪は、プラゾシン群で8%、プラセボ群では15%に確認された。

 なお、著者は研究の限界として、問診やカルテ以外で睡眠時無呼吸または睡眠呼吸障害のスクリーニングがなされておらず、未診断の睡眠時無呼吸がプラゾシンの効果をマスクした可能性があることなどを挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)