骨折治療用インプラント除去後感染に術前抗菌薬は有用か/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2018/01/17

 

 膝下の骨折の治療に用いた整形外科用インプラント除去後の手術部位感染の予防において、手術前に抗菌薬投与を行っても感染リスクは低減しないことが、オランダ・アムステルダム大学医療センターのManouk Backes氏らが実施したWound Infections Following Implant Removal(WIFI)試験で示された。整形外科用インプラント除去術の手技は“clean(皮膚の菌汚染や局所感染がない)”とされ、手術部位感染率は2~3.3%と予測されるため、米国疾病管理予防センター(CDC)の最新のガイドラインでは抗菌薬の予防投与の適応はない。その一方で、予測を超える高い感染率が複数の研究で報告されている。JAMA誌2017年12月26日号掲載の報告。

予防投与の効果を無作為化試験で評価
 WIFI試験は、感染率が最も高い領域とされる膝下の骨折治療に用いられた整形外科用インプラント除去後の、抗菌薬予防投与の効果を評価する多施設共同二重盲検無作為化試験である(Netherlands Organization for Health Research and Development[ZonMw]の助成による)。

 対象は、年齢18~75歳で、膝下(足、くるぶし、下腿)の骨折治療後に整形外科用インプラントの除去術を受けた患者であった。除外基準は、活動性の手術部位感染症や瘻孔、インプラント除去時の抗菌薬治療、術中の骨接合材の再設置、セファロスポリンのアレルギー、腎疾患、免疫抑制薬の使用、妊娠であった。

 被験者は、術前にセファゾリン1,000mg+生理食塩液(0.9%)または生理食塩液(0.9%)をそれぞれ静脈内ボーラス投与する群に無作為に割り付けられた。

 主要アウトカムは、米国CDCの判定基準に基づく術後30日以内の手術部位感染であり、副次アウトカムは身体機能、健康関連QOL、患者満足度とした。

 2014年11月~2016年9月にオランダの19施設に500例が登録され、477例が割り付けの対象となった。6ヵ月間のフォローアップが行われ(最終フォローアップ日:2017年3月28日)、470例(セファゾリン群:228例、生食群:242例)が解析の対象となった。

30日以内の手術部位感染:13.2% vs.14.9%
 割り付け対象例(477例)の平均年齢は44歳(SD 15)、女性が274例(57%)であった。インプラント設置からの経過期間中央値は11ヵ月(IQR:7~16)だった。

 30日以内の手術部位感染は66例(14.0%)で発症した(表層感染:58例、深層感染:8例)。このうちセファゾリン群が30例(13.2%)、生食群は36例(14.9%)と、両群間に有意な差を認めなかった(絶対リスク差:-1.7、95%信頼区間[CI]:-8.0~4.6、p=0.60)。

 表層感染はセファゾリン群が29例(12.7%)、生食群は29例(12.0%)で、深層感染はそれぞれ1例(0.4%)、7例(2.9%)であり、いずれも両群間に有意差はみられなかった。

 健康関連QOL(EuroQol 5-Dimension 3-Level[EQ-5D-3L])、身体機能(Lower Extremity Functional Scale[LEFS])、患者満足度(視覚アナログスケール[VAS])についても、両群間に有意な差はなかった。

 著者は、「本試験の手術部位感染率は、既報の一連の後ろ向き試験に比べて高かった。前向き試験では退院後の手術部位感染の適切な把握は困難で、一般に過少報告となるため感染率は高くなることが多いとはいえ、14.0%は予想を超えて高く、観血的整復固定術後の感染率を上回る値である」としている。

(医学ライター 菅野 守)