若年1型糖尿病にポンプ療法 vs.注射療法、安全なのは?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2017/10/23

 

 平均年齢14.1歳の1型糖尿病患者3万579例を対象とした検討において、インスリンポンプ療法はインスリン注射療法と比べて、重症低血糖症、糖尿病性ケトアシドーシスの発現リスクは低く、直近の血糖コントロールもより良好であることが示された。ドイツ・アーヘン工科大学のBeate Karges氏らによる住民ベースコホート研究の結果で、著者は「示された結果は、1型糖尿病の小児、青少年、若年成人において、インスリンポンプ療法はインスリン注射療法と比べて、臨床的アウトカムの改善と関係するとのエビデンスを提示するものである」とまとめている。インスリンポンプ療法は、若い1型糖尿病患者の代謝コントロールを改善することが示唆される一方で、短期的な糖尿病性合併症との関連が明らかになっていなかった。JAMA誌2017年10月10日号掲載の報告。

ドイツ、オーストリア、ルクセンブルクで20歳未満患者を対象に検討
 研究グループは2011年1月~2015年12月に、ドイツ、オーストリア、ルクセンブルクの糖尿病センター446施設で参加者を募ったDiabetes Prospective Follow-up Initiativeを行い、小児、青少年、若年成人の1型糖尿病患者において、インスリンポンプ療法はインスリン注射療法よりも、重症低血糖症と糖尿病性ケトアシドーシスの発現頻度が低いかどうかを調べた。

 対象は、20歳未満で罹病期間が1年以上、インスリンポンプ療法またはインスリン注射療法(1日4回以上投与)を受ける1型糖尿病患者。年齢、性別、糖尿病罹病期間、患者の出生地(ドイツまたはオーストリア以外の生まれ)、BMI値、糖化ヘモグロビン値を共変量とし、傾向スコア適合法と治療の逆確率重み付け法(inverse probability of treatment weighting:IPTW)を用いて解析した。

 主要アウトカムは、直近の治療年間の重症低血糖症と糖尿病性ケトアシドーシスの発現頻度とした。副次アウトカムは、糖化ヘモグロビン値、インスリン投与量、BMI値などであった。

重症低血糖症と糖尿病性ケトアシドーシスの発現頻度、ポンプ療法が有意に低い
 被験者3万579例(平均年齢14.1歳[SD 4.0]、男子53%)のうち、1万4,119例がポンプ療法を(期間中央値3.7年)、1万6,460例が注射療法(同3.6年)を受けていた。ポンプ療法群の患者9,814例を注射療法群の患者9,814例と適合して解析した。

 ポンプ療法群は注射療法群と比べて、重症低血糖症(9.55 vs.13.97/100患者年、差:-4.42[95%信頼区間[CI]:-6.15~-2.69]、p<0.001)、糖尿病性ケトアシドーシス(3.64 vs.4.26/100患者年、差:-0.63[95%CI:-1.24~-0.02]、p=0.04)ともに発現頻度が有意に低かった。

 糖化ヘモグロビン値も、ポンプ療法群が注射療法群よりも有意に低値であった(8.04% vs.8.22%、差:-0.18[95%CI:-0.22~-0.13]、p<0.001)。また、1日インスリン投与量も、ポンプ療法群が注射療法群よりも有意に少なかった(0.84U/kg vs.0.98U/kg、差:-0.14[95%CI:-0.15~-0.13]、p<0.001)。

 BMI値は、両療法群間で有意差はみられなかった。

 同様の結果は、全コホートで傾向スコア・治療の逆確率重み付け法で解析後も得られた。

(ケアネット)