迅速分子検査法、超多剤耐性結核菌を検出可能か/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2017/10/03

 

 試薬カートリッジを用いて喀痰検体から直接、薬剤耐性結核菌の同定が可能な自動分子検査法について、研究開発中の試薬カートリッジを臨床評価した結果、イソニアジド、フルオロキノロン系薬、アミノグリコシド系薬への耐性と関連する結核菌の変異を、正確に検出可能であることが確認された。米国・国立アレルギー・感染症研究所のYingda L. Xie氏らが、NEJM誌2017年9月14日号で報告した。同検査法については、試薬カートリッジXpert MTB/RIFと解析器GeneXpertを用いたシステムが、2時間で結核菌群およびリファンピシン耐性遺伝子を検出可能であり、世界中の結核プログラムで使用されている。一方、フルオロキノロン系薬と注射二次薬は、多剤耐性結核の治療の柱であるが、これらに耐性を示す場合は超多剤耐性結核と定義される。開発中の試薬カートリッジは、そうした患者の迅速な検出や、リファンピシン耐性患者の適切な抗菌薬選択に有用なものと期待されていた。

表現型薬剤感受性試験、DNAシーケンスと比較検証
 研究グループは、中国の鄭州と韓国のソウルで結核症状を呈する成人を登録し、開発中の試薬カートリッジ(GeneXpertで分析)アッセイと、表現型薬剤感受性試験およびDNAシーケンスを比較する、前向き診断精度研究を行った。

 各参加者の喀痰検体を用いて、まず、ダイレクトに開発中アッセイおよびXpert MTB/RIFアッセイを行い、さらに、喀痰検体を前処理後に塗抹法、液体培養、固体培養を行った。結核菌分離株を用いて、表現型薬剤感受性試験と、katGgyrAgyrBrrsの各遺伝子と、eisinhAのプロモーター領域のDNA塩基配列決定を行った。

迅速ポイントオブケア検査としての将来性は十分
 2014年6月~2015年6月に、総計405例が登録され、401例が試験適格基準を満たした。このうち、結核菌培養陽性であった308例が、主要解析集団に包含された。

 308例において、表現型薬剤感受性試験を参照基準とした場合、開発中アッセイの表現型耐性検出の感度は、イソニアジドが83.3%(95%信頼区間[CI]:77.1~88.5)、オフロキサシンは88.4%(95%CI:80.2~94.1)、モキシフロキサシン(限界濃度0.5μg/mL)87.6%(95%CI:79.0~93.7)、モキシフロキサシン(限界濃度2.0μg/mL)は96.2%(95%CI:87.0~99.5)、カナマイシン71.4%(95%CI:56.7~83.4)、アミカシン70.7%(95%CI:54.5~83.9)であった。

 また、表現型耐性検出の特異度は、モキシフロキサシン(限界濃度2.0μg/mL)については84.0%(95%CI:78.9~88.3)であったが、それ以外のすべての薬剤については94.3%以上であった。

 DNA塩基配列決定を参照基準とした場合、開発中アッセイの耐性関連変異検出感度は、イソニアジド98.1%(95%CI:94.4~99.6)、フルオロキノロン系薬が95.8%(95%CI:89.6~98.8)、カナマイシン92.7%(95%CI:80.1~98.5)、アミカシンは96.8%(95%CI:83.3~99.9)であった。特異度はすべての薬剤について99.6%(95%CI:97.9~100)以上であった。

 今回の結果を踏まえて著者は、「開発中のアッセイは、結核患者の治療決定をガイドするための、迅速ポイントオブケア検査としての将来性が確信される」とまとめている。

(ケアネット)