大腸がんスクリーニング、受診勧奨の郵送で完遂率が3~4倍/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2017/09/22

 

 大腸がん(CRC)スクリーニングの完遂率を高めるために、免疫学的便潜血検査(FIT)または大腸内視鏡検査の完遂を郵便で働きかけるアウトリーチ活動を行った結果、通常ケアと比較して3年間で完遂率が有意に高くなり、検査別ではFITよりも内視鏡の完遂率のほうが有意に高率となった。米国・テキサス大学サウスウエスタン医療センターのAmit G. Singal氏らが、3年にわたるプラグマティックな無作為化臨床試験の結果を報告した。CRCスクリーニングの受診を1回増やすには、内視鏡完遂を働きかけるよりもFIT完遂を働きかけるほうが効果的とされる。しかし長期的な効果には繰り返しの検査受診と、異常が見つかった際の適時のフォローアップが必要ではないかとして、本検討が行われた。JAMA誌2017年9月5日号掲載の報告。

約6,000例を対象に、アウトリーチ活動による大腸がんスクリーニング完遂率を評価
 研究グループは、2013年3月~2016年7月にParkland Health and Hospital system(ダラスの公立病院地域医療ネットワーク)のプライマリケアを受診し、最新のCRCスクリーニングを受けていない50~64歳の患者5,999例を、郵送型FIT群(1回分のFIT検査キットと返送用封筒などを郵送、2週以内に返送がなければスタッフが電話:2,400例)、郵送型大腸内視鏡検査群(大腸内視鏡検査の予約電話番号を記載した案内状を郵送、2週以内に電話がなければスタッフが電話、検査費用は所得に応じて0~50ドルを患者が負担:2,400例)、および通常ケア群(外来受診時に推奨されたスクリーニングを受ける:1,199例)のいずれかに無作為に割り付け、3年間追跡した。アウトリーチ活動には、FIT群の異常なし例には年1回の定期的な検査を促す、FIT群の異常あり例または大腸内視鏡群の患者には診断およびスクリーニングのための大腸内視鏡検査の完遂を促す活動も含まれた。

 主要評価項目は、スクリーニングの完遂(大腸内視鏡検査、年1回のFIT、およびFITで異常ありの場合の診断的大腸内視鏡検査の遵守)、CRCが検出された場合の治療評価、副次評価項目は、腺腫または進行がんの検出、出血や穿孔などのスクリーニング関連有害事象などである。

3年間で完遂率が有意に上昇、またFITよりも内視鏡の完遂率が高率に
 全5,999例(年齢中央値56歳、女性61.9%)において、スクリーニング完遂率は通常ケア群10.7%に対し、大腸内視鏡検査群38.4%(通常ケア群との群間差:27.7%、95%信頼区間[CI]:25.1~30.4%)、FIT群28.0%(同:17.3%、95%CI:14.8~19.8%)で、両アウトリーチ群の完遂率が通常ケア群より有意に高く(両群ともp<0.001)、また大腸内視鏡検査群のほうがFIT群より有意に高かった(群間差:10.4%、95%CI:7.8~13.1%、p<0.001)。

 腺腫/進行がんの検出率も、通常ケア群より両アウトリーチ群で高く、大腸内視鏡検査群のほうがFIT群よりも有意に高かった。通常ケア群と比較した腺腫検出率の群間差は、大腸内視鏡検査群が10.3%(95%CI:9.5~12.1、p<0.001)、FIT群1.3%(同:-0.1~2.8、p=0.08)であり、大腸内視鏡検査群とFIT群の差は9.0%(同:7.3~10.7、p<0.001)であった。

 スクリーニング関連有害事象は、いずれの群においても確認されなかった。

 なお、著者は研究の限界として、参加者が対象機関以外でスクリーニングを受けた可能性があることなどを挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 上村 直実( うえむら なおみ ) 氏

国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長

東京医科大学 消化器内視鏡学講座 兼任教授

J-CLEAR評議員