STEMIへの線溶療法、薬剤により死亡リスクに差/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2017/09/01

 

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者に対する線溶療法では、薬剤などによって重要な相違点があり、アルテプラーゼ急速投与、テネクテプラーゼ(tenecteplase)およびレテプラーゼ(reteplase)は、ストレプトキナーゼ(streptokinase)やアルテプラーゼ非急速投与より優先して考慮されるべきで、線溶療法への糖蛋白IIb/IIIa阻害薬の追加は避けるべきである。タイ・ウボンラーチャターニー大学のPeerawat Jinatongthai氏らが、無作為化試験のシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果を報告した。線溶療法は、医療資源が乏しい環境下のSTEMI患者に対する、機械的再灌流に代わる治療法であるが、各種線溶療法を比較した包括的なエビデンスは不足していた。Lancet誌2017年8月19日号掲載の報告。

約13万例を含む計40試験をネットワークメタ解析
 研究グループは、PubMed、Embase、the Cochrane Library、ClinicalTrials.gov、WHO-ICTRPを用い、2017年2月28日までに発表された、成人STEMI患者の再灌流療法としての線溶薬の無作為化比較試験(対照は他の線溶薬、プラセボまたは無治療。単独投与または補助的な抗血栓療法との併用投与は問わず)を検索。STEMIに対する再灌流療法の適応が承認されている線溶薬(ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ)を検証した試験のみを対象に、ネットワークメタ解析を行った。

 主要評価項目は、30~35日以内の全死因死亡率、安全性評価項目は大出血(BARC基準の3a、3b、3c)。

 選択基準を満たした試験は40件で、12種類の異なる線溶療法を受けた12万8,071例が解析に組み込まれた。

死亡リスク増加、出血リスク増加の種類別特性が明らかに
 アルテプラーゼ急速投与(tPA_acc)+非経口抗凝固薬(PAC)と比較し、ストレプトキナーゼ+PACおよびアルテプラーゼ非急速投与(tPA)+PACは、全死因死亡のリスク増加と有意な関連が認められた。リスク比(RR)は、ストレプトキナーゼ+PACが1.14(95%信頼区間[CI]:1.05~1.24)、tPA+PACが1.26(同:1.10~1.45)であった。一方、tPA_acc+PACと、テネクテプラーゼ+PACおよびレテプラーゼ+PACは、死亡リスクに差はなかった。

 大出血に関しては、テネクテプラーゼ+PACは、他のレジメンと比較して出血リスクの低下と関連している傾向があった(RR:0.79、95%CI:0.63~1.00)。一方、線溶薬+PACへの糖蛋白IIb/IIIa阻害薬(GP)の追加は、tPA_acc+PACと比較して、大出血リスクの増加がみられた。RRは、tPA+PAC+GPが1.27(95%CI:0.64~2.53)、テネクテプラーゼ+PAC+GPが1.47(同:1.10~1.98)、レテプラーゼ+PAC+GPが1.88(同:1.24~2.86)、ストレプトキナーゼ+GPが8.82(同:0.52~151.04)であった。

 なお著者は、大出血の定義の異質性や、観察期間が短いこと、脳卒中の診断法に関する詳細が不明などを研究の限界として指摘し、「脳卒中の転帰に対する線溶薬の有効性については解釈に注意が必要である」と述べている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 野間 重孝( のま しげたか ) 氏

栃木県済生会宇都宮病院 副院長

J-CLEAR評議員