迅速承認医薬品、承認前後の試験の特色を比較/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2017/08/29

 

 重篤または生命を脅かす症状の治療薬は、米国FDAによる迅速承認制度の下、有効性のエビデンスが代用評価でも臨床上の有益性をもたらす可能性がかなりあることが示されれば迅速承認に至る。ただし実際に臨床的改善をもたらすかについて、その後に「確認試験」を行うことが求められる。英国・ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のHuseyin Naci氏らは、それら迅速承認医薬品の、承認前試験と確認試験の特色について調べた。その結果、承認後3年以内に約7割が臨床的有効性を検討していたが、アウトカムの拠り所が代用評価のままであるなど、承認前試験と試験デザインの要素は似通っていたという。JAMA誌2017年8月15日号掲載の報告。

承認前試験と確認試験の特徴付け
 研究グループは、FDAの公開文書をレビューし、2009~13年に迅速承認された医薬品の承認前試験を特定し、また、FDAデータベースの上市後要件とコミットメント、ClinicalTrials.gov、適合ピアレビューの情報から、確認試験の状況や結果を抽出し、評価した。最終フォローアップは2017年4月7日。

 承認前試験と確認試験の特徴付けを、試験デザイン(無作為化、盲検化、比較対照、主要エンドポイント)の特色比較で行った。その後の規制当局の判断、迅速承認と当局が求めた調整要件履行までの推定期間についても要約した。

66%が承認後に有効性を検討、実証済みは42%だが代用評価試験がベース
 調査対象期間中に迅速承認を受けた医薬品は22種、適応は24個(うち19個はがん治療関連)であった。適応24個のエビデンスとなった承認前試験は合計30件。それらへの登録被験者数の中央値は132例(四分位範囲:89~224)であった。また、包含被験者数が100例未満であった試験が8試験(27%)、200例未満は20試験(60%)であった。
 最短フォローアップの3年時点で、求められた確認試験を完了していたのは19/38件(50%)で、結果については18件が公表していた。

 臨床的有効性を検討していたのは25/38件(66%)あった。長期追跡評価を行っていたのは7件(18%)、安全性にフォーカスしていたのは6件(16%)であった。

 無作為化デザインを採用していた試験の割合は、迅速承認前試験12/30件(40%)、承認後試験10/18件(56%)で、有意な差は認められなかった(差:16%、95%信頼区間[CI]:−15~46、p=0.31)。

 承認後の調整要件を完了し有効性を実証していたのは10/24適応(42%)であったが、それらは代用評価の試験に基づくものであった。また、全要件を完遂していなかった14/24適応(58%)において、2適応(8%)が少なくとも1つの確認試験で臨床的有益性を実証することができず、2適応(8%)は終了、3適応(13%)は1年以上遅延中であり、残る7適応(29%)は目標タイムラインにしたがって試験が進行中であった。なお、5年以上前の初期に承認された8適応で、まだ臨床的有益性が確認されていなかった。

専門家はこう見る

コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

統計数理研究所 大学統計教員育成センター 特任教授

滋賀大学 データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 特任教授

J-CLEAR評議員