2次予防の抗血小板療法、重大出血リスクは高齢ほど上昇/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2017/06/26

 

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)非併用でアスピリンベースの抗血小板治療を受ける虚血性イベント後の患者について、重大出血のリスクは長期的に高いことが、前向き住民ベースのコホート試験で示された。また、そのような患者は、先行研究で示された患者と比べて実際には高齢の患者で多く、機能障害が残るまたは死亡に至る上部消化管出血のリスクがかなり高かった。これら、英国・オックスフォード大学のLinxin Li氏らによる「Oxford Vascular Study」試験の結果は、Lancet誌オンライン版2017年6月13日号で発表された。虚血性イベント後の患者には生涯にわたる抗血小板治療が、先行研究である75歳未満の患者を対象とした試験をベースに推奨されている。著者らは年齢を問わず、2次予防としての抗血小板治療における出血のリスク、経過、アウトカムを評価するため、本検討を行った。

初発虚血性イベント後の抗血小板治療と出血リスクを評価
 試験は、2002~12年のOxford Vascular Studyにおける、イベント後に抗血小板治療(主にアスピリンベースでPPI併用なし)を受けていた初発の一過性脳虚血発作(TIA)、虚血性脳卒中または心筋梗塞を呈した患者を、2013年まで追跡して行われた。

 治療を要した出血のタイプ、重症度、アウトカム(機能障害または死亡)、経過について、対面調査で10年間追跡した。

 先行研究からのKaplan-Meierリスク推定値と相対リスクの低下推定値をベースとし、PPIを常に併用することによる上部消化管出血予防のための、年齢特異的な治療必要数(NNT)を推算し評価した。

重大出血のリスクは年齢が上昇するほど高値に
 1万3,509人年の追跡期間中、3,166例(75歳以上1,582例[50%])が405件の初発の出血イベントを有した(消化管218件、頭蓋内45件、その他142件)。そのうち314例(78%)が出血入院したが、うち117例(37%)については治療に関するコーディングデータが得られなかった。

 非重大出血リスクは、年齢と関連していなかった。一方で、重大出血は年齢が上昇するほど高まることが認められた(75歳以上のハザード比[HR]:3.10、95%信頼区間[CI]:2.27~4.24、p<0.0001)。とくに、致死的出血について関連が高く(5.53、2.65~11.54、p<0.0001)、長期の追跡期間中、持続して認められた。

 同様の結果が、重大上部消化管出血についても認められ(75歳以上のHR:4.13、2.60~6.57、p<0.0001)、とくに機能障害または死亡においてみられた(10.26、4.37~24.13、p<0.0001)。

 75歳以上の患者では、重大上部消化管出血は、大部分が機能障害または死亡に至った(患者の62%[45/73例] vs.虚血性脳卒中再発患者では47%[101/213例]と約半数)。また、機能障害または致死的な脳内出血よりも多く(上部消化管出血45例 vs.脳内出血18例)、75歳以上の患者の絶対リスクは1,000人年当たり9.15(95%CI:6.67~12.24)であった。

 なお、機能障害または致死的上部消化管出血を5年間で1例予防するためのPPI常用の推定NNT値は、年齢とともに低下することが示された。65歳未満の患者では338であったが、85歳以上では25と低かった。

 これらを踏まえて著者は、「75歳以上の患者の重大出血の半数以上が重大合併症とされている上部消化管出血であった。そのような出血を予防するPPI常用の推定NNT値は低く、併用が推奨されるべきであろう」と述べている。

(ケアネット)

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コメンテーター : 後藤 信哉( ごとう しんや ) 氏

東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授

J-CLEAR理事