無作為化試験の質、雑誌により格差/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2017/06/26

 

 無作為化試験について、鍵となる方法論の報告が不十分であることや、方法論の不十分な活用が問題視されているが、フランス国立衛生医学研究所(INSERM)のAgnes Dechartres氏らは、それらが過去30年間でどのように変化しているかを調べた。その結果、とくに無作為化の順番作成(sequence generation)および割当秘匿(allocation concealment)に関しては、不十分な報告や方法論の不十分な利用は減少していたが、大半でそれらが認められ、とくにインパクトファクターの低いジャーナルに掲載された試験でその可能性が考えられるという。BMJ誌2017年6月8日号掲載の報告。

バイアスリスクが不明または高い試験の割合で評価
 検討は、Cochraneバイアスリスク(無作為化の順番作成、割当秘匿、盲検化、不完全アウトカムデータ)の評価を報告していた、2011年3月~2014年9月に発表されたCochraneレビューに包含された無作為化試験のデータをマッピングして行われた。各無作為化試験について、レビュー著者が作成したバイアスリスクについてのコンセンサスを抽出し、また、主要参照として論文発表年と雑誌名を抽出。Journal Citation Reportsで雑誌名と2014年のインパクトファクターを突合。インパクトファクターについては4群(≧10、5~10、<5、不明)を設定して分類した。

 主要評価項目は、レビュー著者がバイアスリスクが不明または高いと評価していた試験の割合とした(これらを不十分な報告や方法論の不十分な利用についての代替指標とみなした)。

順番作成・割当秘匿のバイアスリスクが不明・高い試験の割合は減少
 分析には、3,136雑誌で発表されていた無作為化試験2万920件、レビュー2001本が含まれた。このうち1万7,944件(85.8%)の無作為化試験が、Journal Citation Reportsで索引付けができインパクトファクターが明らかであった1,706雑誌で発表されていた。それら雑誌のインパクトファクターの中央値は3.4(四分位範囲:2.0~5.5)であった。

 バイアスリスクが不明であった試験の割合は、順番作成(48.7%)、割当秘匿(57.5%)については高値で、盲検化(30.6%)、不完全アウトカムデータ(24.7%)については低値であった。バイアスリスクが高い試験の割合は、順番作成は4.0%、割当秘匿は7.2%であった。一方、盲検化については33.1%、不完全アウトカムデータは17.1%であった。

 すべてのバイアスリスクについて、インパクトファクターが高い雑誌の試験報告は、低い雑誌のものと比べて、バイアスリスク不明または高値の試験の割合が低いことが認められた。たとえば、割当秘匿のバイアスリスクが不明であった試験の割合は、インパクトファクター≧10の雑誌では38.0%であったのに対し、インパクトファクター不明の雑誌では73.4%であった。

 また、順番作成のバイアスリスクが不明の試験の割合は、1986~90年は69.1%であったが2011~14年には31.2%に低下していたことも明らかになった。同様の傾向は割当秘匿についてもみられ、同期間に70.1%から44.6%に低下していた。バイアスリスクが不明の試験を除外後、方法論の不十分な利用についても、時間とともに減少していることが確認された(順番作成は14.8%から4.6%に、割当秘匿は32.7%から11.6%に)。

(ケアネット)

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コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

統計数理研究所 大学統計教員育成センター 特任教授

滋賀大学 データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 特任教授

J-CLEAR評議員