センチネルリンパ節転移陽性の悪性黒色腫に完全郭清は有効?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2017/06/16

 

 センチネルリンパ節転移陽性の悪性黒色腫患者において、ただちに完全リンパ節郭清を実施することで、局所の病勢コントロール率が上昇し予後に関する情報は得られたが、悪性黒色腫特異的生存期間は延長しなかった。米国・Saint John’s Health CenterのMark B. Faries氏らが、国際多施設共同第III相無作為化試験MSLT-II(the second Multicenter Selective Lymphadenectomy Trial)の結果を報告した。先行研究MSLT-Iでは、原発腫瘍の厚さが1.2~3.5mmのリンパ節転移陽性悪性黒色腫患者において、センチネルリンパ節生検は悪性黒色腫特異的生存期間、すなわち悪性黒色腫により死亡するまでの生存期間の延長につながることが示唆されたが、センチネルリンパ節転移を有する患者に対する完全リンパ節郭清の意義は明らかにされていなかった。NEJM誌2017年6月8日号掲載の報告。

約2,000例で、完全リンパ節郭清と経過観察を比較
 研究グループは、標準的な病理検査または複数マーカーの分子分析によってセンチネルリンパ節転移が確認された悪性黒色腫患者を、完全リンパ節郭清(センチネルリンパ節郭清後に残りの所属リンパ節を郭清)をただちに実施する郭清群と、超音波検査でリンパ節を経過観察する観察群に無作為に割り付けた。

 主要評価項目は悪性黒色腫特異的生存期間とし、log-rank検定を用いて両群を比較した。また、副次評価項目は、無病生存およびセンチネルリンパ節以外のリンパ節転移累積発生率などとした。intention-to-treat(ITT)解析の解析対象は1,934例、per-protocol解析の解析対象は1,755例であった。

郭清群で疾患特異的生存期間は延長せず、3年生存率は同等
 ITT解析およびper-protocol解析のいずれにおいても、郭清群で悪性黒色腫特異的生存期間の延長は認められなかった。

 追跡期間中央値43ヵ月の時点で、per-protocol解析による3年悪性黒色腫特異的生存率(平均±SE)は郭清群と観察群とで同等であった(86±1.3% vs.86±1.2%、p=0.42)。一方、3年無病生存率は、郭清群のほうが観察群よりわずかに高値であった(68±1.7% vs.63±1.7%、p=0.05)。ただし、この結果について著者は「3年時点での所属リンパ節の病勢コントロール率上昇によるもので(92±1.0% vs.77±1.5%、p<0.001)、結果の解釈には注意しなければならない」と指摘している。

 なお、センチネルリンパ節以外のリンパ節転移は、郭清群で11.5%に認められ、再発の独立した予後因子であった(ハザード比:1.78、p=0.005)。リンパ浮腫は、郭清群で24.1%、観察群で6.3%に認められた。

 著者は研究の限界として、対象の疾病負荷が低く、追跡期間が短いため、さらなるリンパ節再発が予測されること、センチネルリンパ節以外の小さなリンパ節転移が標準病理検査で検出されなかった可能性などを挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)