10代の自傷・薬物・飲酒による緊急入院、自殺リスクが大幅増/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2017/06/08

 

 自傷行為や薬物乱用、アルコール摂取関連といった理由で緊急入院した10~19歳の青少年は、事故で緊急入院した青少年に比べ、退院後10年間の自殺リスクが3.2~4.5倍高いことが示された。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAnnie Herbert氏らが、緊急入院をした青少年約100万人について後ろ向きコホート研究を行い明らかにした。Lancet誌オンライン版2017年5月25日号掲載の報告。

15年間の病院データを基にした後ろ向きコホート研究
 研究グループは、1997年4月~2012年3月の英国内の病院データHospital Episode Statistics(HES)を基に、緊急入院した10~19歳の青少年を対象に、後ろ向きコホート研究を行った。

 被験者について、救急外来受診の原因が自傷行為、薬物乱用やアルコール関連、暴力による外傷といった逆境関連の場合と、それ以外の事故関連の場合に分け、退院後10年間の死亡リスクを比較した。死亡の原因は、自殺、薬物またはアルコール関連死、他殺、事故死、その他の5つに分類した。

自傷者の自殺リスク、事故受傷者に比べ5~6倍
 対象期間中に確認された、緊急入院をした青少年は108万368例で、そのうち女子は38万8,937例(36.0%)、男子は69万546例(63.9%)、性別の記載不明が885例(0.1%)だった。このうち、性別の記載不明885例と、慢性疾患などによる入院(男子5万6,107例[8.1%]、女子4万549例[10.4%])を除外して分析した。

 逆境関連の外傷で入院したのは33万3,009例(30.8%)で、うち女子は54.6%、男子は45.4%だった。また、事故関連の受傷で入院したのは64万9,818例(60.2%)で、うち女子は25.6%、男子は74.4%だった。

 対象となった青少年のうち、退院後10年間の死亡は4,782例(0.5%)だった(女子1,312例[27.4%]、男子3,470例[72.6%])。

 逆境関連入院群は事故関連入院群に比べ、退院後10年間の自殺リスクが約3.2~4.5倍だった(補正後サブハザード比:女子4.54、男子3.15)。薬物またはアルコール関連死のリスクも、約3.5~4.7倍に上った(同:女子4.71、男子3.53)。なお、逆境関連入院群の10年死亡リスク推計には殺人リスクも含んだが、発生件数が少なく統計的に明らかなリスクは提示できなかった。

 退院後10年間の補正後事故死リスクは、男子では逆境関連入院群が事故関連入院群と比べて有意な増加を示したが(補正後サブハザード比:1.26、95%信頼区間[CI]:1.09~1.47)、女子では有意な増加は認められなかった(1.21、0.90~1.63)。また、その他の要因についても、死亡リスクの低下が女子では認められたが(0.64、同0.53~0.77)、男子では認められなかった(0.99、0.84~1.17)。

 自傷行為での入院群は事故関連入院群と比べ、退院後の自殺リスクが大幅に増大し、女子では補正後サブハザード比は5.11(95%CI:3.61~7.23)、男子では6.20(同:5.27~7.30)だった。そのほか、薬物乱用やアルコール摂取関連の入院群では、同リスクが女子で4.55倍、男子で4.51倍だった。暴力による入院群は、同リスクが男子でのみ有意に増大し1.43倍だった。しかしながら暴力による入院をした女子では、事故関連入院群と比較して、自殺リスクが増大したが、統計的な有意差は認められなかった(補正後サブハザード比:1.48、95%CI:0.73~2.98)。

 なお、各外傷タイプについて、自殺リスクと薬物またはアルコール関連死のリスクは、同程度に増大が認められた。

 これらの結果を踏まえて著者は、自傷に限らず、薬物乱用とアルコール関連で入院した青少年に対しても、退院後の自殺予防のための介入が必要だと述べている。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)