ケアプログラムは、急性期病院での終末期の質を改善するか/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2017/05/29

 

 Care Programme for the Last Days of Life(CAREFuL)と呼ばれる終末期医療プログラムは、継続的なモニタリングを要するものの、急性期病院の高齢者病棟における臨死期の医療を改善する可能性があることが、ベルギー・ブリュッセル自由大学のKim Beernaert氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2017年5月16日号に掲載された。英国の高齢者の50%以上が、終末期医療の質が最良とは言えない環境の急性期病院で死亡するという。また、CAREFuLと同様のプログラムとして、リバプール・ケア・パスウェイ(LCP)がよく知られているが、既報の急性期病院でのクラスター無作為化試験はイタリアで行われたがん患者を対象とするものが1件あるのみで、この試験ではケアの質改善は確認されていない。

CAREFuLの有効性を評価するクラスター無作為化試験
 本研究は、臨死期の高齢者への看取りの医療の快適性(comfort)や質の改善における、終末期医療プログラムCAREFuLの有効性を評価するクラスター無作為化対照比較試験である(The Flemish Government Agency for Innovation by Science and Technologyとベルギーがん協会“Kom Op Tegen Kanker”の助成による)。

 CAREFuLは、既存の3つのLCP(英国、オランダ、イタリア)に基づいて開発されたプログラムで、終末期の処置の手引き、研修、支援文書、実施の手引きから成る。

 2012年10月1日~2015年3月31日に、ベルギー、フランドル地方の10の急性期病院(クラスター)の高齢者病棟が参加した。これらの病院が、CAREFuLを行う群または標準的医療を行う群(対照群)に無作為に割り付けられた。患者と家族には割り付け情報がマスクされ、医療者にはマスクされなかった。

 主要評価項目は、看護師と家族介護者の評価による臨死期(死亡までの48時間)の快適性(End-of-Life in Dementia-Comfort Assessment in Dying[CAD-EOLD]で評価)および症状管理(End-of-Life in Dementia-Symptom Management[SM-EOLD]で評価)であり、intention to treat解析が行われた。

看護師評価による快適性が良好、家族介護者の満足度は不良
 解析には10病院の4,241床のベッドのうち451床(11%)が含まれた。2つの群に5病院ずつが割り付けられ、CAREFuL群の164例、対照群の118例が評価基準を満たした。このうち、看護師による評価はCAREFuL群が132例(80%、死亡時平均年齢85.8[SD 6.84]歳、男性53%、原死因:肺炎27%、肺炎以外の感染症19%、フレイル19%)、対照群は109例(92%、84.0[7.52]歳、男性56%、原死因:心不全24%、がん21%、肺炎20%)で、家族介護者による評価はそれぞれ48例(29%)、23例(19%)で行われた。

 CAREFuL群は対照群に比べ、看護師評価による死亡までの48時間の快適性が有意に良好であった(CAD-EOLDの補正平均差:4.30、95%信頼区間[CI]:2.07~6.53、p<0.0001)。家族介護者評価による快適性(CAD-EOLD補正平均差:-0.62、95%CI:-6.07~4.82、p=0.82)、看護師評価による症状管理(SM-EOLD補正平均差:-0.41、-1.86~1.05、p=0.58)、家族介護者評価による症状管理(SM-EOLD補正平均差:-0.59、-3.75~2.57、p=0.71)には、両群間に差を認めなかった。

 一方、死亡までの48時間の家族介護者評価による満足度(End-of-Life in Dementia-Satisfaction With Care[SWC-EOLD]で評価)は、CAREFuL群のほうが有意に不良であった(SWC-EOLD補正平均差:-4.00、95%CI:-7.87~-0.12、p=0.04)。また、対照群では、ベースラインに比べ介入終了後のSWC-EOLDがわずかに改善したのに対し、CAREFuL群にはこのような改善もみられなかった。

 著者は、「CAREFuLは、急性期病院高齢者病棟における死の質および医療の質を改善する可能性が示唆されるが、医療への満足度に及ぼすCAREFuLの効果のよりよい理解を得るには、質に関するさらなる検討を要する」とし、「より良好な管理のもとでプログラムを実施することで、終末期医療が改善される可能性が高く、他の形態のプログラムを導入して評価を行うことも考慮に値するだろう」と考察している。

(医学ライター 菅野 守)