限定的エビデンスを基に承認された薬の市販後調査の傾向/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2017/05/22

 

 米国食品医薬品(FDA)が限定的エビデンスに基づき承認した新薬の、市販後のエビデンスの質と量を調べた結果、当初のものとはエビデンスが大きく変化しており、FDAが最初に承認した適応について、臨床的アウトカムを用いて有効性を確認した市販後の対照試験報告はわずかであることが、米国・ニューヨーク州立大学のAlison M. Pease氏らによるシステマティックレビューの結果、明らかにされた。FDAはしばしば、主要エンドポイントが臨床的アウトカムではなく、疾患の代用マーカー(surrogate markers)を用いたpivotal試験(単一または複数)をエビデンスベースとした新薬についても承認を行っている。これらの新薬は、たとえ市販後臨床試験で有益性が期待できないと立証されても、その後も広く用いられている現実があるという。BMJ誌2017年5月3日号掲載の報告。

2005~12年にFDAが承認した117種・123適応について調査
 研究グループは、Drugs@FDA databaseとPubMedをソースに、2005~12年にFDAが疾患代用マーカーを用いたpivotal試験(単一または複数)をベースに承認した新薬の、市販後に発表された前向き対照臨床試験の全報告をレビューし、その特徴を明らかにした。

 検索の結果、同期間中にpivotal試験に基づき117種の新薬が123の適応について承認されていた。

 適応が、(1)単一pivotal試験に基づき承認されたもの、(2)代用マーカーに基づき承認されたもの、(3)代用マーカー評価による単一pivotal試験に基づき承認されたものに分類して市販後試験の特徴を調べた。

試験未実施が35.0%
 市販後中央値5.5年(四分位範囲:3.4~8.2)の間に、758件の対照試験が発表されていた。その大半(554/758件、73.1%)が、代用マーカーを基に承認された適応についての試験であった。

 市販後に最も多く行われていたのは実薬対照試験で、(1)単一pivotal試験に基づき承認された適応に関しては67/77件(87.0%)、(2)代用マーカーに基づき承認された適応に関しては365/554件(65.9%)、(3)代用マーカー評価による単一pivotal試験に基づき承認された適応に関しては100/127件(78.7%)であった。

 また、市販後試験の有効性の主要エンドポイントとして代用マーカーを評価していたのは、それぞれ(1)51/77件(66.2%)、(2)512/554件(92.4%)、(3)110/127件(86.6%)であった。

 全体で承認された123のうち43の適応(35.0%)については、市販後試験が行われた形跡がみつからなかった。

 総市販後試験数の中央値は、(1)単一pivotal試験に基づき承認された適応に関しては1件(四分位範囲:0~2)、(2)代用マーカー評価に基づき承認された適応に関しては3(1~8)で、(3)代用マーカー評価による単一pivotal試験に基づき承認された適応については1(0~2)であった。また、市販後試験の登録被験者数の中央値は、それぞれ(1)90例(0~509)、533例(122~3,633)、38例(0~666)であった。

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コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

統計数理研究所 大学統計教員育成センター 特任教授

滋賀大学 データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 特任教授

J-CLEAR評議員