生体吸収性スキャフォールド、血栓症リスクを増大/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2017/04/13

 

 エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド(BVS)による経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、エベロリムス溶出金属ステントを使用した場合と比べ、デバイス血栓症の発生リスクが約3.9倍であることが示された。一方で主要エンドポイントの標的血管不全(心臓死、標的血管心筋梗塞または血行再建術のいずれか)の発生リスクは同等だった。オランダ・アムステルダム大学のJoanna J Wykrzykowska氏らが、1,845例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2017年3月29日号で発表した。BVSは従来ステントの弱点を克服するために開発された新たなデバイスで、これまでの検討で、コバルトクロムステントPCIに対する非劣性が示されている。しかしその後の試験で、金属ステントよりもデバイス血栓症のリスクが高いことが示唆されていた。

安全性への懸念から、早期に結果を報告
 研究グループは、オランダの5つの実施頻度の高いPCIセンターで2013年8月28日~2015年12月27日に、PCI実施予定の患者1,845例を無作為に2群に分け、一方にはエベロリムス溶出BVSを(924例)、もう一方にはエベロリムス溶出金属ステントを(921例)、それぞれ留置した。

 主要エンドポイントは複合評価の標的血管不全(心臓死、標的血管心筋梗塞または標的血管血行再建術のいずれかと定義)だった。

 本論は、2016年11月11日の安全性レビュー後に、データ・安全性モニタリング委員会が安全性への懸念から早期報告の勧告を行ったことを受けて、研究グループが主要エンドポイントに関する記述的情報を報告したものである。

標的血管不全、発生率は11~12%
 追跡期間中央値707日間の主要エンドポイントの発生は、BVS群105例、金属ステント群94例と、両群間に有意な差はなかった(2年累積イベント率はそれぞれ11.7%と10.7%、ハザード比[HR]:1.12、95%信頼区間[CI]:0.85~1.48、p=0.43、Kaplan–Meier推定time-to-event解析による)。

 個別にみると、心臓死の発生はBVS群18例、金属ステント群23例、2年累積イベント率はそれぞれ2.0%、2.7%で有意差はなかった(HR:0.78、95%CI:0.42~1.44、p=0.43)。標的血管心筋梗塞の発生は、それぞれ48例と30例、2年累積イベント率は5.5%、3.2%で、BVS群で有意に高率だった(1.60、1.01~2.53、p=0.04)。標的血管血行再建術は76例、65例、同イベント率はそれぞれ8.7%、7.5%で、BVS群で高率だったが有意差はみられなかった(1.16、0.84~1.62、p=0.37)。

 一方、definite/probableデバイス血栓症の発生はBVS群で31例、金属ステント群は8例で、2年累積イベント率はそれぞれ3.5%、0.9%とBVS群で有意に高かった(HR:3.87、95%CI:1.78~8.42、p<0.001)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

原著論文はこちら

Wykrzykowska JJ, et al. N Engl J Med. 2017 Mar 29. [Epub ahead of print]