乳幼児の中等度細気管支炎に、高流量酸素療法は?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2017/02/10

 

 中等度の細気管支炎に対する高流量加温加湿鼻カニューレ酸素療法(HFWHO)は、低流量鼻カニューレ酸素療法(標準酸素療法)と比較して、酸素離脱までの時間を短縮しないことが示された。オーストラリア・John Hunter小児病院のElizabeth Kepreotes氏らが、HFWHOの有用性を検証することを目的とした第IV相無作為化非盲検比較試験の結果を報告した。細気管支炎は乳幼児で最も一般的な肺感染症であり、治療は呼吸困難や低酸素症の管理が中心となる。HFWHOの使用は増加しているが、これまで無作為化試験は行われていなかった。今回の結果について著者は、「中等度細気管支炎に対するHFWHOの早期使用は、基礎疾患の経過を緩和するものではないことを示唆するが、HFWHOには、費用が高額な集中治療を必要とする小児を減らす緊急処置としての役割があるかもしれない」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年2月1日号掲載の報告。

2歳未満の細気管支炎患児約200例で、HFWHOと標準酸素療法を比較
 研究グループは、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州にあるJohn Hunter病院救急診療部またはJohn Hunter小児病院を受診し、中等度細気管支炎と診断された24ヵ月未満の小児を、HFWHO群(空気-酸素が1対1の混合ガス、最大流量1L/kg/分、上限20L/分、FiO2上限0.6)と、標準療法群(乳児用鼻カニューレを介した100%酸素、最大流量2L/分の低流量)に1対1の割合で、封筒法を用いて無作為に割り付けた(ブロックサイズ4、出生時の妊娠週数で層別化)。

 主要評価項目は、無作為化から酸素療法を離脱するまでの時間で、無作為化された全小児を対象に、主要および副次安全解析が行われた。

 2012年7月16日~2015年5月1日の期間で、小児202例がHFWHO群と標準療法群に101例ずつ無作為に割り付けられた。

酸素離脱までの時間に有意差はないが、HFWHOは治療失敗までの時間を遅らせる
 酸素療法離脱までの時間(中央値)は、標準療法群が24時間(95%信頼区間[CI]:18~28)であったのに対して、HFWHO群は20時間(95%CI:17~34)であった(ハザード比[HR]:0.9、95%CI:0.7~1.2、log rank検定p=0.61)。

 治療の失敗(最大流量でもSpO290%未満、呼吸困難悪化など)に関しては、HFWHO群が14例(14%)で、標準療法群の33例(33%)より少なかった(p=0.0016)。また、治療失敗児において、標準療法群と比較してHFWHO群で治療失敗までの時間の延長が認められた(HR:0.3、95%CI:0.2~0.6、p<0.0001)。標準療法群の治療失敗児33例中20例(61%)が、HFWHOによる緊急対応で改善した。集中治療室への入室を要したのは、標準療法群12例(12%)、HFWHO群14例(14%)であった(差:-1%、95%CI:-7~16、p=0.41)。

 有害事象は4例(HFWHO群で機械の接続不良による酸素飽和度低下と回路からの結露の吸引が1例ずつ、標準療法群で酸素チューブ接続不良が2例)発生したが、いずれも試験中止には至らず、酸素吸入に関連した重大な有害事象(気胸、圧損傷、出血など)は認められなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)