オピオイド誘発性便秘にmethylnaltrexoneは有効

提供元:ケアネット

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公開日:2008/06/11

 

モルヒネなどオピオイド鎮痛薬の治療は癌など進行疾患の疼痛緩和に有効な半面、患者を苦しめる副作用として便秘を伴う。本論は、そうしたオピオイド誘発性便秘を改善するために開発されたmethylnaltrexoneの、第III相試験の報告。皮下投与の安全性と効果を検証した米国サンディエゴ・ホスピス・緩和医療研究所のJay Thomas氏らは、「methylnaltrexoneは速やかに排便を誘発し、オピオイドの鎮痛作用への影響もないようだ」としている。NEJM誌2008年5月29日号より。

末期患者133例を対象にプラセボ対照試験




methylnaltrexoneは末梢のμオピオイド受容体拮抗剤で、血液脳関門を通過しにくいため、中枢神経でのオピオイドの鎮痛効果に影響しないとされている。試験では、オピオイドを2週以上投与されてオピオイド誘発性便秘となり、安定用量オピオイドと応急的な緩下薬服用を3日以上続けても便通のない末期患者133例を、2週間にわたり1日おきにmethylnaltrexone(0.15mg/kg)皮下投与またはプラセボを投与するよう無作為に割り付けた。

共通主要転帰は、試験薬の第1回服用後4時間以内の便通(排便)と、初回服用から4回のうち2回以上で4時間以内に便通があったこととした。この段階を完了した患者は、その後3ヵ月の非盲検延長試験に進んだ。

初回投与で4時間以内に48%が便通再開




第1回服用後4時間以内に便通があったのは、methylnaltrexone群の48%に対してプラセボ群では15%だった。また最初の4回の服用のうち2回以上で、4時間以内に応急的な緩下薬なしで便通があったのは、methylnaltrexone群の52%に対してプラセボ群は8%だった(両群間比較のP<0.001)。奏効率は延長試験期間を通じて変わらなかった。

便通までの時間(中央値)は、methylnaltrexone群のほうがプラセボ群より有意に短かった。またオピオイド離脱症状の所見や、疼痛スコアの変化は観察されなかった。最も頻度の高い有害事象は、腹痛と腹部膨満感だった。

Thomas氏らは「methylnaltrexoneは患者の便通を急速に改善した。また本剤治療によって中枢神経系の痛覚消失に影響が出たり、オピオイド離脱症状を促進することはないようだ」と結論している。

(武藤まき:医療ライター)