感染患者使用後の病室消毒の強化で感染リスク低下/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2017/01/27

 

 多剤耐性菌とクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)は、入院患者の死亡をもたらす医療関連感染の主要原因であるが、終末消毒(感染患者が入院していた部屋の消毒)の強化により、感染リスクが低下することが示された。米国・Duke Infection Control Outreach NetworkのDeverick J Anderson氏らが、4種の消毒法の有効性を検証するBenefits of Enhanced Terminal Room(BETR)Disinfection試験を行い報告した。先行研究で、標準消毒法に殺胞子活性を有する化学薬剤や他の殺菌技術を追加することで病院内感染リスクが低下することは示されていたが、このような強化戦略を評価した多施設無作為化試験は行われていなかった。Lancet誌オンライン版2017年1月16日号掲載の報告。

4種類の終末消毒法をクラスター無作為化クロスオーバー法で比較
 研究グループは、米国南東部の病院9施設で実務的クラスター無作為化クロスオーバー試験を実施した。標的とする細菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌・バンコマイシン耐性腸球菌・C. difficile・多剤耐性アシネトバクター)の感染・保菌患者が使用していた病室を患者退室後に次の4種の方法で最終的に消毒することとし、順次4種の方法を行うよう参加施設を1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、各方法をそれぞれ7ヵ月間、連続して4種を実施した。(1)標準消毒法(標準群):C. difficile以外は第4級アンモニウム消毒剤、C. difficileには漂白剤を使用、(2)標準消毒法+UV(標準+UV群):C. difficile以外は第4級アンモニウム消毒剤+紫外線殺菌(UV-C)、C. difficileには漂白剤+UV-C、(3)漂白剤(漂白剤群)、(4)漂白剤+UV法(漂白剤+UV群)。

 主要評価項目は、消毒後の病室に次に入院した患者を曝露患者としたときの、曝露患者における全標的菌の感染率または保菌率、およびC. difficile感染率でintention-to-treat解析にて評価した。

標準消毒法+紫外線殺菌追加で、次の入室患者の感染・保菌率が低下
 曝露患者は3万1,226例で、基準を満たした解析対象は2万1,395例(69%;標準群4,916例、標準+UV群5,178例、漂白剤群5,438例、漂白剤+UV群5,863例)であった。

 標準群では、曝露期間2万2,426日中の標的菌感染・保菌者は115例、頻度は51.3/1万日であったのに対し、標準+UV群では曝露期間2万2,389日においてそれぞれ76例、33.9/1万日であり、標準群より有意に低かった(相対リスク[RR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.50~0.98、p=0.036)。

 一方、漂白剤群(101例、41.6/1万日、RR:0.85、95%CI:0.69~1.04、p=0.116)、ならびに漂白剤+UV群(131例、45.6/1万日、RR:0.91、95%CI:0.76~1.09、p=0.303)は、標準群と有意差は認められなかった。C. difficile感染率も同様に、漂白剤のみと漂白剤+UV-Cで差はなかった(36vs .38例、31.6/1万日 vs.30.4/1万日、RR:1.0、95%CI:0.57~1.75、p=0.997)。

(医学ライター 吉尾 幸恵)