幹線道路の近くに住む人は認知症リスクが高い/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2017/01/19

 

 幹線道路から<50mに住む人は、300m超離れた場所に住む人に比べ、認知症発症リスクが高く、幹線道路から離れるにつれて、同リスクの増加幅は有意に減少することが示された。一方、そうした関連は、パーキンソン病、多発性硬化症はみられなかったという。カナダ・Public Health OntarioのHong Chen氏らが住民ベースのコホート試験の結果、明らかにしたもので、Lancet誌オンライン版2017年1月4日号で発表した。

認知症、多発性硬化症、パーキンソン病について関連を検証
 研究グループは、2001年4月時点でカナダ・オンタリオ州に居住する20~50歳(被験者数約440万人、多発性硬化症コホート)と55~85歳(被験者数220万人、認知症・パーキンソン病コホート)の2つの住民ベースコホートを対象に試験を行った。被験者はいずれもカナダで生まれ、オンタリオ州に5年以上住む人で、ベースラインで多発性硬化症、認知症、パーキンソン病といった神経性疾患を発症していない人だった。

 被験者について、郵便番号を基に試験開始5年前の1996年時点で、幹線道路にどれほど近接して居住していたかを調べた。多発性硬化症、認知症、パーキンソン病の発症については、地域の医療管理データで確認した。

 幹線道路への近接居住とこれら疾患の罹患率との関連について、Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。なお、糖尿病、脳損傷、居住地域の所得などについて補正を行った。

大都市在住の幹線道路から<50m内居住、認知症リスクは1.12倍に
 その結果、2001~12年に各疾患を発症した人は認知症が24万3,611人、パーキンソン病は3万1,577人、多発性硬化症は9,247人だった。

 幹線道路への近接居住との関連性は、パーキンソン病、多発性硬化症については認められなかった。

 認知症発症については、幹線道路から<50m内に住む人の、同発症に関する補正後ハザード比は、300m超離れた場所に住む人に対して、1.07(95%信頼区間[CI]:1.06~1.08)、50~100mでは1.04(同:1.02~1.05)、101~200mでは1.02(同:1.01~1.03)、201~300mでは1.00(同:0.99~1.01)と有意な関連が認められた(傾向p=0.0349)。

 なかでも、幹線道路近接居住と認知症発症について、大都市在住(幹線道路から50m内に住む人のハザード比:1.12、同:1.10~1.14)と、引っ越し経験なし(同ハザード比:1.12、同:1.10~1.14)で強い関連が認められた。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)