過剰飲酒者への治療、カウンセリング併用で改善/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2016/12/26

 

 飲酒問題を抱える過剰飲酒者に対して、1次医療施設の医師による強化ケア(enhanced usual care:EUC)と、非専門カウンセラーによる飲酒問題カウンセリング(Counselling for Alcohol Problems:CAP)の併用は、EUC単独よりも有効であり、費用対効果も良好であることが示された。インド・Sangath CentreのAbhijit Nadkarni氏らが、ゴアにある1次医療機関10施設で治療を受けている過剰飲酒者を対象とした無作為化比較試験の結果を報告した。過剰飲酒(アルコールの有害な使用)に対する治療では構造化精神療法が第1選択として推奨されているが、プライマリケアでこのような専門治療をルーチンに受けることは難しく、飲酒問題に対する大きな治療格差が問題となっている。今回の結果を踏まえて著者は、「CAPが、男性の世界的な疾病負担の主要原因の1つであるアルコール使用障害の治療格差を減らす重要戦略となりうることが示された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年12月14日号掲載の報告。

医師による強化ケアのみ群と、カウンセリング併用群に無作為化
 研究グループは、2013年10月28日~2015年7月29日に、アルコール使用障害特定テスト(AUDIT)スコアが12~19点、年齢が18~65歳の男性過剰飲酒者378例(入院等を要する者、意思疎通困難者、スクリーニング時点で酩酊者は対象から除外)を、通常の医師による診療に加え、医師へのスクリーニング結果提供および過剰摂取に対するWHOのMental Health Gap Action Programmeガイドラインの要約提供を行う強化ケア(enhanced usual care:EUC)群と、CAPを併用したEUCを行うCAP併用群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。ECU群の1例はプロトコル違反で除外となり、intention-to-treat集団はEUC群189例、CAP併用群188例、計377例であった。

 主要評価項目は、3ヵ月後における飲酒問題改善(AUDITスコアが8未満)および過去14日間の1日平均アルコール消費量とした。EUCを行う医師および評価者は盲検化された。

カウンセリング併用で飲酒問題改善率と過去14日間の禁酒率が有意に増加
 377例中336例(89%)が3ヵ月後の主要評価を完遂した(CAP併用群164例[87%]、EUC群172例[91%])。

 飲酒問題改善率は、CAP併用群36%(59/164例)、EUC群26%(44/172例)で、補正後寛解達成率比は1.50(95%信頼区間[CI]:1.09~2.07、p=0.01)、過去14日間の禁酒率はそれぞれ42%および18%で、CAP併用群のほうがECU群より有意に優れていた(補正オッズ比:3.00[95%CI:1.76~5.13]、p<0.0001)。

 ただし、試験期間中に飲酒した患者においては、過去14日間の1日平均アルコール消費量に差はなかった(37.0±44.2g vs.31.0±27.8g、カウント比:1.08[0.79~1.49]、p=0.62)。

 副次評価項目では、過去14日間の禁酒率への効果は認められたが(補正後平均差[AMD]16.0%[8.1~24.1]、p<0.0001)、暴飲への効果は認められず(暴飲発生日率のAMD:-0.4%[-5.7~4.9]、p=0.88)、同様に飲酒(簡易版飲酒問題リスト[Short Inventory of Problems]スコアのAMD:-0.03[-1.93~1.86]、p=0.97)、障害スコア(WHO障害評価尺度[WHO-DAS]スコアのAMD:0.62[-0.62~1.87]、p=0.32)、就労不能日数(オッズ比:1.02[0.61~1.69]、p=0.95)、自殺企図(補正後企図率比:1.8[-2.4~6.0]、p=0.25)、親しいパートナーへの暴力(補正後実施率比:3.0[-10.4~4.4]、p=0.57)への効果は示されなかった。

 本研究での設定で、飲酒問題改善1例追加当たりの増分費用は217ドル(95%CI:50~1073)であり、費用対効果受容曲線での受容確率は85%であった。

 重篤な有害事象は、CAP併用群6例(4%)、EUC群13例(8%)で有意差は認めれなかった(p=0.11)。

(医療ライター 吉尾 幸恵)