進行心不全への新規遠心流ポンプ、軸流ポンプより予後良好/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2016/11/29

 

 進行心不全患者への完全磁気浮上遠心流ポンプ植込み術は、軸流ポンプに比べポンプの不具合による再手術の割合が低く、良好な転帰をもたらすことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院心血管センターのMandeep R. Mehra氏らが行ったMOMENTUM 3試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2016年11月16日号に掲載された。連続流左心補助人工心臓により、進行心不全患者の生存率が改善しているが、ポンプ血栓症の発現がみられる。血栓症を回避するために、新たな磁気浮上遠心連続流ポンプが開発された。

約300例を対象とする非劣性試験
 MOMENTUM 3は、進行心不全患者において、新規の遠心流ポンプと軸流ポンプの有効性を比較する非盲検無作為化非劣性試験(St. Jude Medical社の助成による)。

 対象は、標準的な薬物療法を施行後に再発した進行心不全で、補助人工心臓植込み術の目的(心臓移植への橋渡し治療、心臓移植の対象外の患者への最終的治療)にかかわらず登録は可能とした。被験者は、新たな遠心連続流ポンプ(HeartMate 3)または市販の軸流ポンプ(HeartMate II)の植込み術を行う群に無作為に割り付けられた。

 主要評価項目は、植込み術後6ヵ月時の身体機能障害をともなう脳卒中(改訂Rankinスコア>3[0~6、数字が大きいほど機能障害が重度])のない生存と、デバイスの交換または除去のための再手術のない生存の複合エンドポイントであった。本試験は、主要エンドポイントの非劣性検定に要する検出力を有していた(非劣性マージン:-10%)。

 2014年9月~2015年10月に、左心補助人工心臓植込み術の経験を持つ外科医が所属する米国の47施設に294例(ITT集団)が登録され、遠心流ポンプ群に152例、軸流ポンプ群には142例が割り付けられた。プロトコルに従って、それぞれ1例、4例には植込み術が施行されず、残りの289例(PP集団、151例、138例)にデバイスの植え込みが行われた。

再手術は1例のみ、ポンプ血栓症は認めず
 ベースラインの年齢中央値は、遠心流ポンプ群が64.0歳(範囲:19~81)、軸流ポンプ群は61.0歳(24~78)で、男性がそれぞれ79.6%、80.3%を占めた。

 ITT集団における主要エンドポイントの発生率は、遠心流ポンプ群が86.2%(131例)、軸流ポンプ群は76.8%(109例)であった。絶対差は9.4%、95%信頼下限は-2.1(非劣性検定:p<0.001)で、ハザード比(HR)は0.55(95%信頼区間[CI]:0.32~0.95、優越性の両側検定:p=0.04)であり、非劣性と優越性の双方が達成された。

 死亡および身体機能障害をともなう脳卒中の発生率は両群間に有意な差はなかったが、ポンプの不具合による再手術は遠心流ポンプ群が0.7%(1例)と、軸流ポンプ群の7.7%(11例)に比べ有意に少なかった(HR:0.08、95%CI:0.01~0.60、p=0.002)。

 NYHA心機能分類および6分間歩行検査による機能評価では、両群とも同様に改善が認められた。3、6ヵ月時のEQ-5D-5L、EQ-5D VAS、KCCQによるQOL評価も、両群ともに改善し、有意差はみられなかった。

 ポンプ血栓症(疑い例、確定例)は、遠心流ポンプ群では発現せず、軸流ポンプ群は10.1%(14例、18イベント)に認められた(p<0.001)。

 著者は、「患者と担当医は治療の割り付けを知り得るため、QOLなどの患者報告による評価項目に影響を及ぼし、ほとんどの外科医は軸流ポンプの経験は長いが、新規のポンプは米国ではこれまで使用されていないためバイアスの可能性があるなどの限界が存在する。そのため、本試験の知見を、重症度の低い心不全患者に拡大するために外挿すべきではない」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)