高リスク早期乳がんへのテーラードdose-denseの効果/JAMA

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2016/11/18

 

 高リスク早期乳がん患者において、テーラードdose-dense化学療法は標準化学療法と比較して、乳がん無再発生存率を有意に改善するという結果には至らず、むしろ非血液学的毒性の頻度が高まることが示された。スウェーデン・カロリンスカ大学病院のTheodoros Foukakis氏らが、Pan-European Tailored Chemotherapy(PANTHER)試験の結果を報告した。体表面積を基に投与量を決定する標準化学療法は、患者の薬物動態・毒性・有効性の個人差が大きい。患者の状態に合わせて投与量を調整するテーラード化学療法と、投与間隔を短縮するdose-dense化学療法の組み合わせが、予後を改善できるかどうかについてはこれまで明らかになっていなかった。JAMA誌2016年11月8日号掲載の報告。

約2,000例でテーラードdose-dense化学療法と標準化学療法を比較
 PANTHER試験は、2007年2月20日~2011年9月14日に、スウェーデン・ドイツ・オーストリアの86施設で実施された多施設共同無作為化非盲検第III相臨床試験である。対象は、65歳以下のリンパ節非転移陽性あるいは高リスクリンパ節転移陰性乳がん術後患者2,017例で、テーラードdose-dense(dose-dense)群と標準化学療法(対照)群に1対1の割合で無作為割り付けした。

 dose-dense群では、白血球最下点を基にエピルピジン(90mg/m2から開始、38~120mg/m2)+シクロホスファミド(600mg/m2から開始、450~1,200mg/m2)を2週ごと4サイクル、その後ドセタキセル(75mg/m2から開始、60~100mg/m2)を2週ごと4サイクル投与した。対照群では、フルオロウラシル(500mg/m2)+エピルビシン(100mg/m2)+シクロホスファミド(500mg/m2)を3週ごと3サイクル、その後ドセタキセル(100mg/m2)を3週ごと3サイクル投与した。

 主要評価項目は、乳がん無再発生存率(BCRFS)、副次評価項目は5年無イベント生存率(EFS)、遠隔無病生存率(DDFS)、全生存率(OS)、Grade3/4の有害事象発現率であった。

乳がん無再発生存率はそれぞれ88.7%と85.0%で有意差なし
 2,017例(dose-dense群1,006例、対照群1,011例、年齢中央値51歳、四分位範囲:45~58歳、ホルモン受容体陽性80%、リンパ節転移陽性97%)中、2,000例が1サイクル以上の治療を受けた(dose-dense群1,001例、対照群999例)。

 追跡期間中央値5.3年(四分位範囲4.5~6.1年)において、乳がん再発が269件(dose-dense群118件、対照群151件)発生し、5年BCFRSはdose-dense群88.7%、対照群85.0%であった(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.61~1.01、log-rank検定のp=0.06)。dose-dense群では対照群と比較しEFSが有意に改善した(5年EFS:86.7% vs.82.1%、HR:0.79、95%CI:0.63~0.99、p=0.04)。OS(5年OS:92.1% vs.90.2%、HR:0.77、95%CI:0.57~1.05、p=0.09)、およびDDFS(5年DDFS:89.4% vs.86.7%、HR:0.83、95%CI:0.64~1.08、p=0.17)は、両群で差はなかった。

 Grade3/4の非血液学的有害事象の発現率は、dose-dense群52.6%、対照群36.6%であった。

 著者は結果について、「追跡期間が短く、テーラード療法とdose-dense化学療法を組み合わせているため、どちらの方法による影響かを結論付けることはできない」と述べている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)