安定期COPDへの長期酸素療法の効果/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2016/11/04

 

 安静時または運動時に中等度酸素飽和低下が認められる慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対し、長期酸素療法を行っても、初回入院または死亡までの期間延長にはつながらなかった。COPD増悪率やCOPD関連入院率についても、低減効果は示されなかった。米国・コロラド大学のRichard K. Albert氏らの「Long-Term Oxygen Treatment Trial Research Group」が、738例を対象に行った無作為化比較試験の結果、明らかにしたもので、NEJM誌2016年10月27日号で発表した。これまで同患者に対する長期酸素療法の効果は明らかになっていなかった。

24時間、または運動時・睡眠時酸素療法を行いアウトカム比較
 研究グループは、米国内42ヵ所の医療機関を通じて、中等度の安静時酸素飽和低下(パルスオキシメトリ測定の酸素飽和度[SpO2]:89~93%)と、中等度の運動時酸素飽和低下(6分間歩行テスト中のSpO2≧80%が5分以上、90%未満が10秒以上)の安定期COPD患者、738例を対象に試験を行った。

 被験者を無作為に2群に分け、一方には長期酸素療法(368例)を行い、もう一方には同療法を行わなかった(370例)。長期酸素療法群では、安静時酸素飽和低下の人には24時間酸素療法を、運動時酸素飽和低下の人には運動時と睡眠時のみ酸素療法を行った。なお、被験者に割り付けの盲検化はされなかった。

 主要評価項目は、時間-イベント解析による生存期間または初回入院までの期間とした。

QOL、肺機能、6分間歩行距離のいずれも群間格差認められず
 追跡期間は、1~6年、中央値は18.4ヵ月だった。両群の被験者特性は類似しており、長期酸素療法群の被験者の年齢は68.3±7.5歳、72%が男性だった。

 解析の結果、生存期間または初回入院までの期間には、両群で有意差は認められなかった(ハザード比:0.94、95%信頼区間[CI]:0.79~1.12、p=0.52)。

 また、全入院率も両群で同等だった(率比:1.01、同:0.91~1.13)。COPD増悪率(率比:1.08、同:0.98~1.19)、COPD関連入院率(率比:0.99、同:0.83~1.17)についても、両群で有意差はなかった。

 さらに、生活の質(QOL)、肺機能、6分間歩行距離のいずれについても、一貫した群間差はなかった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)