医師の燃え尽き症候群、既存の治療戦略は有効か/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2016/10/17

 

 医師の燃え尽き症候群(burnout)の治療では、これまでに実施された個々人に焦点を当てた介入や組織的な介入によって、臨床的に意味のあるベネフィットが得られていることが、米国・メイヨークリニックのColin P West氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年9月28日号に掲載された。米国の研修医および開業医の全国的な調査では、医師の燃え尽き症候群は流行の域に達していることが示されている。その帰結として、患者ケア、専門家気質、医師自身のケアや安全性(精神的健康への懸念や交通事故を含む)、保健医療システムの存続性への悪影響が確認されているという。

3つのアウトカムをメタ解析で評価

 研究グループは、医師の燃え尽き症候群を予防、抑制するアプローチに関する文献の質およびアウトカムをよりよく理解するために、系統的レビューとメタ解析を行った(Arnold P Gold財団研究所の助成による)。

 2016年1月15日までに医学データベース(MEDLINE、Embase、PsycINFO、Scopus、Web of Science、Education Resources Information Center)に登録された文献を検索した。

 妥当性が検証された指標を用いて、医師の燃え尽き症候群への介入の効果を評価した試験を対象とし、介入の前後を比較した単群試験も含めた。医学生や医師以外の医療従事者に関する試験は除外した。抄録で適格性を判定し、標準化された書式を用いてデータを抽出した。

 燃え尽き(overall burnout)、情緒的消耗感(emotional exhaustion)スコア、脱人格化(depersonalisation)スコアの変化をアウトカムとした。ランダム効果モデルを用いて、各アウトカムの変化の推定平均差を算出した。

すべてのアウトカムと高値例の割合が改善

 15件の無作為化試験に参加した医師716例、および37件のコホート試験に参加した医師2,914例が適格基準を満たした。

 介入によって、燃え尽き(14試験)が54%から44%(平均差:10%、95%信頼区間[CI]:5~14、p<0.0001、I2=15%)へ、情緒的消耗感スコア(40試験)が23.82点から21.17点(平均差:2.65点、95%CI:1.67~3.64、p<0·0001、I2=82%)へ、脱人格化スコア(36試験)は9.05点から8.41点(平均差:0.64点、95%CI:0.15~1.14、p=0.01、I2=58%)へと、いずれも有意に改善した。

 また、情緒的消耗感スコア高値の割合(21試験)は38%から24%(平均差:14%、95%CI:11~18、p<0.0001、I2=0%)へ、脱人格化スコア高値の割合(16試験)は38%から34%(平均差:4%、95%CI:0~8、p=0.04、I2=0%)へと、双方とも有意に低下した。

 有効な個別的介入戦略には、マインドフルネスに基づくアプローチ、ストレス管理訓練、小集団カリキュラムがあり、有効な組織的介入戦略には、労働時間制限や、各施設で工夫された診療業務過程の改良が含まれた。

 著者は、「特定の集団ではどの介入法が最も有効か、また個別的介入と組織的介入をどのように組み合わせれば、より高い効果が得られるかを解明するために、さらなる検討を進める必要がある」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)