ヒトの感知能力を司る遺伝子を特定/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2016/10/11

 

 ヒトの機械知覚(mechanosensation)を司る遺伝子PIEZO2を特定したことを、米国立補完統合衛生センター(NCCIH)のAlexander T. Chesler氏らが発表した。機械知覚とは、感知能力(触覚と自己受容によって認知範囲が喚起される)のことであり、機械刺激を検出し変換する能力に依存する。ヒトや動物に、周辺環境に関する重大な情報を提供し、社会生活を送るうえで重要かつ必要となる感覚であるが、その基礎をなす分子・神経メカニズムは、十分に解明されていなかった。研究グループは、マウスモデルで機械知覚に必須であることが示されたストレッチ依存性イオンチャネルPIEZO2に着目し、ヒトにおける役割を調べた。NEJM誌2016年10月6日号(オンライン版2016年9月21日号)掲載の報告。

特異的症状を有する2人の進行性脊柱側弯症患者を対象に調査
 研究グループは、進行性脊柱側弯症などの標準診断分類に適合しない、特異的な神経筋および骨格を有する2人の患者について、全エクソームシーケンス解析を行った。また、in vitroおよびメッセンジャーRNA解析、機能的脳画像検査、心理身体および運動テストを行い、蛋白質機能と身体知覚への変異遺伝子の影響を調べた。

変異遺伝子の身体知覚への影響が明らかに
 その結果、いずれの患者においてもPIEZO2に複合体不活性化変異が認められた。そして、有毛皮膚において触覚認知識別能力の選択的な喪失が認められた一方で、特異的な弱い機械刺激には反応を示した。

 患者に目隠しをして視覚機能を奪うと、自己受容が著しく低下し、運動失調とディスメトリア(四肢の運動距離測定障害)が著しく増悪した。一方で、自己受容にかなり依存していると思われるタスク(歩くこと、話すこと、書くこと)の実行能力は維持されていた。