肥満遺伝子は減量介入の効果に影響するのか/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2016/10/05

 

 脂肪量および肥満関連(fat mass and obesity associated:FTO)遺伝子のマイナーアレルは、生活様式の変容や薬剤による減量介入の効果に影響を及ぼさないことが、英国・ニューカッスル大学のKatherine M Livingstone氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2016年9月20日号に掲載された。肥満は公的医療の主要な負担であり、有病率は世界的に増加している。FTO遺伝子ホモ接合体(rs9939609)のマイナーアレルは、肥満のリスク増加と関連することが報告されている。

FTO遺伝子と減量効果の関連をメタ解析で評価
 研究グループは、食事、身体活動、薬剤ベースの介入による減量に及ぼすFTO遺伝子の影響の評価を目的に、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った。

 2015年11月までに医学データベース(Ovid Medline、Scopus、Embase、Cochrane)に登録された文献を検索した。

 過体重および肥満の成人において、食事、身体活動、薬剤ベースの介入時に、FTO遺伝子型(rs9939609またはプロキシ)でBMI、体重、ウエスト周囲長の減少効果を評価した無作為化対照比較試験を対象とした。

他の遺伝子変異の検討を進めるべき
 8つの無作為化対照比較試験に参加した9,563例が解析に含まれた。ベースラインの平均年齢は51.6歳(範囲:28~74歳)、BMIは32.2(範囲:23.8~43.2)であった。

 FTO遺伝子マイナーアレルを有する集団では、個々の試験の介入群の対照群に対するBMIの平均差は、-0.33(95%信頼区間[CI]:-1.13~0.47)から0.14(-0.06~0.35)までの幅が認められ、いずれにおいても有意な差はなかった。体重、ウエスト周囲長についても、全般的に同様の結果であった。

 FTO遺伝子マイナーアレルを有する集団では、介入群は、対照群の自然な変化として予測される値に比べ、BMIが0.02(95%CI:-0.13~0.09)、体重が0.04kg(-0.34~0.26)、ウエスト周囲長は0.06cm(-0.43~0.31)減少したが、いずれも有意な差を認めなかった。

 FTO遺伝子の優性モデル(AA/AT vs.TT)を用いた解析では、FTO遺伝子マイナーアレル保因者は非保因者に比べ、BMIが0.05(95%CI:-0.21~0.11、p=0.558)、体重が0.15kg(-0.60~0.30、p=0.524)、ウエスト周囲長は0.22cm(-0.77~0.33、p=0.437)減少したが、いずれも有意な差を認めなかった。

 感度分析では、FTO遺伝子型がBMI、体重、ウエスト周囲長に及ぼす変化には、介入のタイプ(食事、運動、生活様式、薬剤)、介入の期間(10週~3年)、民族(多民族、白人)、サンプルサイズ(264~3,637例)、性別、ベースラインのBMI、年齢による差はなかった。

 著者は、「他のFTO遺伝子型を含め、介入による肥満者の体重減少に影響を及ぼす他の遺伝子変異について検討を進める必要がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)