下肢関節置換術、包括支払制導入でどう変わる?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2016/09/30

 

 包括支払制度(Bundled Payments for Care Improvement:BPCI)導入後最初の21ヵ月間において、下肢関節置換術に関するメディケア(高齢者および障害者向け公的医療保険)の支払い額は、対照病院との比較でBPCI参加病院で低下したが、医療の質に重要な変化はなかったことが示された。BPCIとは、エピソードごとに一連の医療行為(episode of care)として提供されるすべての治療やサービスの診療報酬を一括して支払う方法で、メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)の自発的イニシアチブである。下肢関節置換術は、メディケア受給者で最も一般的な手術であることから、米国・Lewin GroupのLaura A. Dummit氏らは、BPCIの導入で医療の質を低下させることなく費用を削減できるかどうかを評価し、報告した。JAMA誌2016年9月27日号(オンライン版2016年9月19日号)掲載の報告。

BPCI参加病院 vs.対照病院で検討
 研究グループは、ベースライン期間(2011年10月~2012年9月)と介入期間21ヵ月(2013年10月~2015年6月)における下肢関節置換術を受けたメディケア受給者のアウトカムを、BPCI参加病院176施設およびマッチングした対照病院とで比較した。

 主要評価項目は、入院期間中および退院後90日間における標準化メディケア支払い額、サービス利用および医療の質(計画外の再入院率、救急部受診率、死亡率)とした。

 下肢関節置換術を施行した患者数は、BPCI参加病院ではベースライン期間中は2万9,441例、介入期間中は3万1,700例(平均年齢±SD:74.1±8.89歳、女性65.2%)、対照病院ではそれぞれ2万9,440例(768施設)および3万1,696例(841施設)(74.1±8.92歳、女性64.9%)であった。

メディケア支払い額は約1,166ドル減少、医療の質に差はなし
 平均メディケア支払い額は、BPCI参加施設でベースライン期間3万551ドル(95%CI:3万201~3万901)から介入期間2万7,265ドル(同:2万6,838~2万7,692)へと、3,286ドル減少した。対照施設は、それぞれ3万57ドル(2万9,765~3万350)から2万7,938ドル(2万7,639~2万8,237)へと、2,119ドルの減少であった。メディケア支払い額は、主に回復期ケア施設の利用減少により、対照群よりBPCI群で約1,166ドル有意に多く減少した。
 
 退院後30日における予定外再入院率(-0.1%、95%CI:-0.6~0.4%)、退院後90日間における予定外再入院率(-0.4%、95%CI:-1.1~0.3%)、退院後30日救急部門受診率(-0.1%、95%CI:-0.7~0.5%)、退院後90日救急部門受診率(0.2%、95%CI:-0.6~1.0%)、退院後30日死亡率(-0.1%、95%CI:-0.3~0.2%)、退院後90日死亡率(-0.0%、95%CI:-0.3~0.3%)など、診療報酬請求データを基にした医療の質の評価に、統計的な差は認められなかった。

 著者は今後の課題として、他の治療や、より長期間の追跡調査で評価する必要があると指摘している。

(医療ライター 吉尾 幸恵)