過体重・肥満は死亡リスクを増大:世界4地域のメタ解析/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2016/07/26

 

 過体重および肥満により、世界の4つの地域で一貫して全死因死亡のリスクが増大していることが、Global BMI Mortality Collaborationの調査で明らかとなった。研究の成果はLancet誌オンライン版2016年7月13日号に掲載された。過体重(BMI 25.0~<30.0)およびGrade1の肥満(30.0~<35.0)では、標準体重(18.5~<25.0)に比べ全死因死亡のリスクは増大しないことが報告されている。一方、BMIと死亡との因果関係を高い信頼性の下で推定するには、逆因果関係の影響をできるだけ回避する必要があり、慢性疾患や喫煙はBMIに影響を及ぼす可能性があるという。

過体重、肥満と死亡の関連をメタ解析で評価
 研究グループは、過体重、肥満と死亡の関連を評価するために、BMIに関する前向き研究の参加者のデータを用いてメタ解析を行った(英国医学研究会議[MRC]などの助成による)。

 交絡および逆因果関係を回避するために、喫煙未経験者に限定した解析を行い、既存疾患を有する者およびフォローアップ期間の最初の5年間のデータは除外した。

 アジア、オーストラリア/ニュージーランド、欧州、北米で行われた239件の前向き研究(フォローアップ期間中央値:13.7年、四分位範囲:11.4~14.7年)に参加した1,062万5,411人のうち、登録時に慢性疾患がなく、5年以上生存した喫煙未経験者の189件に参加した395万1,455人であり、このうち38万5,879人が死亡した。

 主要評価項目は、BMI 22.5~<25.0の集団との比較における他の8つのBMI集団の、試験、年齢、性別で補正した死亡のハザード比(HR)とした。

BMIが低くても高くても死亡リスクが上昇
 全死因死亡のリスクはBMI 20.0~25.0の集団が最も低く(BMI 20.0~<22.5[HR:1.00、95%CI:0.98~1.02]、BMI 22.5~<25.0[1.00、0.99~1.01])、これよりBMIが低い集団(BMI 18.5~<20.0[1.13、1.09~1.17]、BMI 15.0~<18.5[1.51、1.43~1.59])および高い集団(BMI 25.0~<27.5[1.07、1.07~1.08]、BMI 27.5~<30.0[1.20、1.18~1.22])のいずれもが、リスクが有意に高かった。

 Grade1の肥満(BMI 30.0~<35.0)の全死因死亡のHRは1.45(95%CI:1.41~1.48)、Grade2の肥満(BMI 35.0~<40.0)のHRは1.94(1.87~2.01)、Grade3の肥満(BMI 40.0~<60.0)のHRは2.76(2.60~2.92)であり、いずれもリスクが有意に高かった。

 また、BMI 25.0以上の集団では、BMIとほぼ対数線形的に死亡率が上昇し、その程度は各地域(死亡数が少ない南アジアは除外)でほぼ同じであった。すなわち、BMIが5増加するごとに、HRが欧州で1.39(95%CI:1.34~1.43)、北米で1.29(1.26~1.32)、東アジアで1.39(1.34~1.44)、オーストラリア/ニュージーランドでは1.31(1.27~1.35)高くなった。

 このBMIの5増加ごとのHRの上昇は、若年者が高齢者よりも(BMI測定時の年齢が35~49歳の集団のHR:1.52[95%CI:1.47~1.56] vs.同70~89歳の集団のHR:1.21[1.17~1.25]、pheterogeneity<0.0001)、男性が女性よりも(1.51[1.46~1.56] vs.1.30[1.26~1.33]、pheterogeneity<0.0001)高かったが、BMIが自己申告の試験と実測の試験に差はなかった。

 著者は、「これらの知見は、あらゆる種類の脂肪過多を防止する戦略を支持し、過体重や中等度肥満は高い死亡率とは関連がないとする提言に疑問を呈するものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)