肥満治療薬5剤の体重減少効果を比較/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2016/06/27

 

 米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ている5つの肥満治療薬は、いずれも良好な体重減少効果を有し、とくにphentermine-トピラマート配合薬とリラグルチドの効果が高いことが、米国・アイオワ大学のRohan Khera氏らの検討で示された。2014年の報告では、世界には約19億人の成人の過体重者と約6億人の肥満者がおり、長期的に有効な治療戦略の確立がきわめて重要とされる。FDAは、1つ以上の体重関連の併存疾患(2型糖尿病、高血圧、脂質異常症)を有する肥満(BMI≧30)または過体重(BMI≧27)の治療として、5つの肥満治療薬を承認しているが、これらの薬剤を比較した無作為化臨床試験のエビデンスは少ないという。JAMA誌2016年6月14日号掲載の報告。

5つの薬剤の体重減少効果と有害事象をネットワークメタ解析で評価
 研究グループは、5つの肥満治療薬―orlistat、lorcaserin、naltrexone-bupropion配合薬、フェンテルミン/トピラマート配合薬、リラグルチドの、体重減少効果と有害事象を比較した論文を系統的にレビューし、ネットワークメタ解析を行った(National Library of Medicineなどの助成による)。

 2016年3月23日の時点で、MEDLINE、EMBASE、Web of Science、Scopus、Cochrane Centralに登録された文献を検索した。18歳以上の過体重者または肥満者を対象に、FDAの承認を得ている5つの肥満治療薬を他剤またはプラセボと比較した無作為化臨床試験(治療期間1年以上)の論文を選出した。

 2人の研究者が、事前に規定されたプロトコルを用いて別個にデータを抽出した。ベイジアンネットワークメタ解析を行い、surface under the cumulative ranking(SUCRA)確率法を用いて薬剤の有効性の相対的な順位を評価した。エビデンスの質の評価にはGRADE基準を用いた。

 主要評価項目は、治療1年時の体重減少率5%以上および10%以上を達成した患者の割合、減量の程度、有害事象による治療中止とした。

リラグルチドは効果が高いが、有害事象関連の治療中止が多い
 1998~2015年に報告された28件の無作為化臨床試験に参加した2万9,018例が解析の対象となった。ベースラインの全体の年齢中央値は46歳、女性が74%含まれ、体重中央値は100.5kg、BMI中央値は36.1だった。

 1年時のプラセボ群の体重減少率5%以上の達成率は23%であった。これに対し、フェンテルミン/トピラマート配合薬群は75%(オッズ比[OR]:9.22、95%信用区間[credible interval:CrI]:6.63~12.85、SUCRA:0.95)、リラグルチド群は63%(5.54、4.16~7.78、0.83)、naltrexone-bupropion配合薬群は55%(3.96、3.03~5.11、0.60)、lorcaserin群は49%(3.10、2.38~4.05、0.39)、orlistat群は44%(2.70、2.34~3.09、0.22)であり、いずれも有意に良好であった。

 体重減少率10%以上の達成率のORも、プラセボ群に比べ5つの肥満治療薬群が優れた。達成率は、プラセボ群の9%に対し、フェンテルミン/トピラマート配合薬群が54%、リラグルチド群が34%、naltrexone-bupropion配合薬群が30%、lorcaserin群が25%、orlistat群は20%だった。

 1年時のプラセボ群と比較した超過体重減少(excess weight loss)は、フェンテルミン/トピラマート配合薬群が8.8kg(95%CrI:-10.20~-7.42)、リラグルチド群が5.3kg(-6.06~-4.52)、naltrexone-bupropion配合薬群が5.0kg(-5.94~-3.96)、lorcaserin群が3.2kg(-3.97~-2.46)、orlistat群は2.6kg(-3.04~-2.16kg)であった。

 プラセボ群と比較した5つの肥満治療薬の有害事象関連の治療中止のORは1.34~2.95であった。lorcaserin群が最も低かった(OR:1.34、95%CrI:1.05~1.76、SUCRA:0.61)のに対し、リラグルチド群(2.95、2.11~4.23、0.20)が最も高く、次いでnaltrexone-bupropion配合薬群(2.64、2.10~3.35、0.23)が高かった。

 全試験の脱落率は30~45%と高く、バイアスのリスクによりエビデンスの質は低くなった。GRADE基準を適用すると、体重減少5%以上の達成率のORのエビデンスの質は中等度であった。

(医学ライター 菅野 守)