PCI後1年超のDAPT継続期間を予測するモデル/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2016/04/07

 

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施後1年超の2剤併用抗血小板療法(DAPT)の継続期間を明らかにする予測モデルが開発された。米国、ベスイスラエル・ディーコネス医療センターのRobert W. Yeh氏らが、1万1,648例を対象に行った無作為化試験「DAPT」試験の被験者データから開発した。PCI後のDAPTでは、虚血リスクは減少するが、出血リスクの増大が報告されている。今回開発したモデルは、検証試験の結果、それらを中程度の精度で予測できるものだったという。JAMA誌オンライン版2016年3月29日号掲載の報告より。
 

PCI後12~30ヵ月の虚血/出血リスク因子を抽出
 研究グループは2009年8月~14年5月にかけて、11ヵ国で行われたDAPT試験の被験者1万1,648例のデータを基に、PCI後12ヵ月~30ヵ月の虚血リスクと出血リスクの予測因子を抽出し予測モデルを作成した。DAPT試験では被験者に対し、PCI後12ヵ月間、チエノピリジンとアスピリンによるDAPTを実施した後、被験者を無作為に2群に分け、一方にはチエノピリジンとアスピリンを、もう一方にはプラセボとアスピリンをそれぞれPCI後12~30ヵ月まで投与した。

 予測モデルの検証については、ブースストラップ法によるコホート内検証と、2007~14年にかけて行われたPROTECT試験の被験者8,136例を対象にそれぞれ行った。

 主要評価項目は、PCI後12~30ヵ月の虚血イベント(心筋梗塞とステント血栓症)と出血イベント(中程度~重度)だった。

予測モデルのC統計量、虚血が0.70、出血が0.68
 DAPT試験の被験者の平均年齢は61.3歳、女性は25.1%だった。そのうち、虚血イベントが認められたのは348例(3.0%)、出血イベントは215例(1.8%)だった。DAPT試験を基に検証した予測モデルのC統計量は、虚血と出血がそれぞれ0.70と0.68だった。

 予測モデルでは、初診時の心筋梗塞、心筋梗歴またはPCI歴、糖尿病、ステント直径3mm未満、喫煙、パクリタキセル溶出ステントに各1ポイント、うっ血性心不全または低駆出分画率の病歴と静脈グラフトインターベンションが各2ポイント、65歳以上75歳未満が-1ポイント、75歳以上が-2ポイントとした。

 そのうえで、合計スコアが2以上のグループ(5,917例)については、12~30ヵ月にアスピリンとプラセボを投与した群の虚血イベント発生率が5.7%だったのに対し、チエノピリジンとアスピリンによるDAPT群では、同発生率は2.7%と、有意に低率だった(リスク差:-3.0%、95%信頼区間:-4.1~-2.0、p<0.001)。

 一方でスコアが2未満のグループ(5,731例)では、同発生率はプラセボ群が2.3%に対しDAPT群は1.7%と、有意差には至らなかった(p=0.07)。

 逆に出血率については、高スコアグループではDAPT群で1.8%に対し、プラセボ群では1.4%と有意差はなく(p=0.26)、低スコアグループではそれぞれ3.0%と1.4%と、DAPT群で高率だった(p<0.001)。

 PROTECT試験の被験者による検証では、虚血と出血に関する予測モデルのC統計量は、いずれも0.64だった。虚血イベントについては、高スコアグループが低スコアグループに比べリスクが大きかったが、出血リスクについて有意差はなかった。

 これらの結果を踏まえて著者は、同予測モデルの予測精度は中程度であり、今後さらなる試験による検証が必要だとしている。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 中野 明彦( なかの あきひこ ) 氏

群馬県済生会前橋病院 循環器内科 代表部長

J-CLEAR推薦コメンテーター