卵巣がんへの週1回パクリタキセル、生存期間を延長するか/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2016/03/07

 

 進行卵巣がんに対するパクリタキセル+カルボプラチン併用療法では、投与間隔を1週ごとに短縮した投与法(dose-dense療法)を行っても、通常の3週ごとの投与法に比べ予後は改善しないことが、米国・Sutterがん研究所のJohn K Chan氏らが行ったGOG-0262試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2016年2月25日号に掲載された。投与の間隔を狭めて頻度を高めたdose-dense療法は、血管新生を阻害し、アポトーシスを促進するため、薬剤の抗腫瘍効果を増強する可能性があるという。パクリタキセルの毎週投与法は乳がん患者の生存期間を延長することが示され、卵巣がんでは日本の研究(JGOG 3016試験)でdose-dense療法の有望な結果が報告されている。

2つの投与法の効果を無作為化第III相試験で評価

 GOG-0262試験は、進行卵巣がんの初回治療におけるパクリタキセル+カルボプラチン併用療法のdose-dense療法と通常治療の有用性を比較する非盲検無作為化第III相試験(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。

 対象は、新規に診断され、完全切除が達成されなかったStage III/IVの上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんとした。最大径が1cm以上の遺残病変がみられないStage II/IIIの患者や、術前補助療法を希望する患者も含まれた。

 被験者は、ベバシズマブ投与の有無で層別化したのち、パクリタキセル(175mg/m2)+カルボプラチン(AUC=6)を3週に1回(第1日)静脈内投与する群(通常治療群)またはパクリタキセル(80mg/m2)+カルボプラチン(AUC=6)を第1、8、15日に静脈内投与する群(dose-dense療法群)に無作為に割り付けられた。3週を1サイクルとして6サイクルを施行することとした。

 主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS)であった。

 2010年9月~2012年2月の間に、米国、カナダ、韓国の200以上の施設に692例が登録され、両群に346例ずつが割り付けられた。全体では、60歳未満が46%、Stage III/IVが97%、上皮性卵巣がんが79%であり、ベバシズマブの投与は84%が、術前補助療法は13%が受けた。

ベバシズマブ非投与例ではPFS中央値が有意に延長

 PFS中央値は、dose-dense療法群が14.7ヵ月であり、通常治療群の14.0ヵ月と比較して有意な延長はみられなかった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.74~1.06、p=0.18)。

 一方、ベバシズマブの投与を受けなかった患者のPFS中央値は、dose-dense療法群が14.2ヵ月と、通常治療群の10.3ヵ月に比し3.9ヵ月有意に延長した(HR:0.62、95%CI:0.40~0.95、p=0.03)。

 これに対し、ベバシズマブの投与を受けた患者では、PFS中央値はそれぞれ14.9ヵ月、14.7ヵ月であり、有意差はみられなかった(HR:0.99、95%CI:0.83~1.20、p=0.60)

 治療効果の同質性(homogeneity)について交互作用検定を行ったところ、ベバシズマブ投与例と非投与例に有意な差が認められた(p=0.047)。

 全生存期間(OS)中央値は、dose-dense療法群が40.2ヵ月、通常治療群は39.0ヵ月であり、有意差はなかった(HR:0.94、95%CI:0.72~1.23)。

 全体で最も頻度の高いGrade 3/4の有害事象は好中球減少(78%)であった。dose-dense療法群の発現率は72%であり、通常治療群の83%よりも有意に低かった(p<0.001)。

 Grade 3/4の貧血の頻度は、dose-dense療法群が36%と、通常治療群の16%よりも高く(p<0.001)、Grade 2~4の感覚性ニューロパチーも、dose-dense療法群は26%であり、通常治療群の18%よりも高頻度であった(p=0.01)。

 14例が担当医により治療関連死の可能性があると判定され、dose-dense療法群が6例、通常治療群は8例だった。

 著者は、「NCIが最近行った卵巣がん患者の人口ベースの研究では、アジア系は白人よりも生存率が高いことが示され、治療への反応や毒性作用に関してゲノム薬理学的な人種差がある可能性も示唆されている。これにより、本試験とJGOG 3016試験の結果の違いが説明できるかもしれない」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)