イブプロフェンは尿路感染症の代替治療となりうるか/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2016/01/12

 

 単純性尿路感染症の女性患者の初回治療において、イブプロフェンによる対症療法はホスホマイシンによる抗菌薬治療に比べ抗菌薬の使用を抑制するが、症状の緩和効果は低く、腎盂腎炎の発症が増加する傾向がみられることが、ドイツ・ゲッティンゲン大学医療センターのIldiko Gagyor氏らの検討で示された。単純性尿路感染症の女性患者には通常、抗菌薬治療が行われるが、本症は無治療で回復する症例も多く、耐性菌増加の防止の観点からも、抗菌薬の処方の抑制対策が進められている。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であるイブプロフェンは、パイロット試験において、症状消失に関して抗菌薬治療に対し非劣性で、3分の2の患者で抗菌薬の処方なしに回復したことが報告されていた。BMJ誌オンライン版2015年12月23日号掲載の報告より。

対症療法の有用性を無作為化試験で評価
 研究グループは、単純性尿路感染症に対するイブプロフェンによる対症療法が、症状、再発、合併症を増加させずに抗菌薬の処方を抑制できるかを検証する無作為化試験を実施した(ドイツ連邦教育研究省[BMBF]の助成による)。

 対象は、年齢18~65歳、典型的な尿路感染症の症状がみられ、リスク因子や合併症がみられない女性であった。

 被験者は、1日にイブプロフェン(400mg×3錠)+プラセボ(1錠)またはホスホマイシン・トロメタモール(3g×1錠)+プラセボ(3錠)を投与する群に無作為に割り付けられ、3日間の治療が行われた。症状の持続、増悪、再発に対し必要に応じて抗菌薬が追加処方された。

 質問票を用いて、症状の重症度、仕事や日常的な活動性の障害度を点数化した。症状、服薬状況、抗菌薬の追加処方のデータは、看護師が被験者に電話して収集した。

 主要評価項目は、0~28日の抗菌薬治療(尿路感染症、その他の病態)の全コース数と、0~7日の症状の負担(毎日の症状スコアの総計の曲線下面積)の複合エンドポイント。症状スコアは、排尿障害、頻尿/尿意切迫、下腹部痛をそれぞれ0~4点の5段階(点数が高いほど重度)で評価した。

 ドイツの42ヵ所のプライマリケア施設に494例が登録された。イブプロフェン群に248例、ホスホマイシン群には246例が割り付けられ、それぞれ241例、243例がITT解析の対象となった。

抗菌薬の回避や遅延処方の許容が可能な女性で考慮
 平均年齢は両群とも37.3歳であった。罹病期間が2日以上(36 vs. 46%)および再発例(17 vs. 23%)の割合が、イブプロフェン群に比べホスホマイシン群で高い傾向がみられた。

 イブプロフェン群はホスホマイシン群に比べ、28日までの抗菌薬コース数が有意に少なかった(94 vs.283コース、減少率:66.5%、p<0.001)。イブプロフェン群で抗菌薬投与を受けた患者数は85例(35%)であり、ホスホマイシン群よりも64.7%少なかった(p<0.001)。

 第7日までの総症状負担の平均値は、イブプロフェン群がホスホマイシン群に比べ有意に大きかった(17.3 vs.12.1、平均差:5.3、p<0.001)。排尿障害(p<0.001)、頻尿/尿意切迫(p<0.001)、下腹部痛(p=0.001)のいずれもがイブプロフェン群で有意に不良であった。

 有害事象の報告はイブプロフェン群が17%、ホスホマイシン群は24%であった(p=0.12)。重篤な有害事象は、イブプロフェン群で4例にみられ、このうち1例は治療関連の可能性が示唆された。ホスホマイシン群では重篤な有害事象は認めなかった。

 腎盂腎炎の頻度はイブプロフェン群で高い傾向がみられた(2 vs.0.4%、p=0.12)が、第15~28日の尿路感染症の再発率はイブプロフェン群で低かった(6 vs.11%、p=0.049)。第7日までの尿路感染症による活動障害は、イブプロフェン群で有意に不良であった(p<0.001)。

 著者は、「対症療法の抗菌薬治療に対する非劣性の仮説は棄却すべきであり、初回イブプロフェン治療を一般的に推奨することはできない」としたうえで、「イブプロフェン群の約3分の2の患者は、抗菌薬を使用せずに回復し、症状が軽度~中等度の患者で効果が高い傾向がみられた。抗菌薬の回避や遅延処方を許容する意思のある女性には、イブプロフェンによる対症療法を提示して検討するのがよいかもしれない」と述べている。

(医学ライター 菅野 守)

専門家はこう見る

コメンテーター : 小金丸 博( こがねまる ひろし ) 氏

東京都健康長寿医療センター 感染症内科専門部長

J-CLEAR推薦コメンテーター