マンモグラフィと超音波検査の併用で乳癌診断率は上昇

提供元:ケアネット

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公開日:2008/05/27

 

リンパ節転移のない乳癌はマンモグラフィでは発見できないが、超音波検査では小さく映る可能性がある。乳癌スクリーニング検査におけるマンモグラフィ単独とマンモグラフィ・超音波併用の成績を比較して、両者が女性の乳癌リスクにどう関わるのかを調べていたAmerican College of Radiology Imaging Network (ACRIN)6666の研究グループは、「超音波検査を併用すると乳癌診断率は上昇するが、同時に偽陽性の数も増加する」と報告した。JAMA誌2008年5月14日号より。

高濃度乳腺の女性2637例を1年間追跡調査




主要評価項目は、マンモグラフィ・超音波併用検査とマンモグラフィ単独検査における診断率と感受性、特異性、診断精度(受信者動作特性曲線の領域で評価)および生検勧告の陽性的中率。

2004年4月~2006年2月にかけて、少なくとも乳房の4分の1が不均一な高濃度乳腺(dense breast)組織の女性2,809例が21地域から集められ、他の検査結果を知らされていない放射線科医によって無作為に、マンモグラフィと医師による超音波検査を受けた。標準試料は病理と12ヵ月間の追跡調査で定義され、有資格参加者2,725例中2,637例(96.8%)について確認した。

併用検査は診断率、診断精度ともに有利




参加者中40例(乳房数41)が癌と診断されたが、併用検査で疑われたものは8例、超音波単独では12例、マンモグラフィ単独では12例で、残り8例(同9)はどちらの検査でもなかった。

マンモグラフィの診断率は、7.6/1,000(2,637例中20例)で、併用検査では11.8/1,000(2,637例中31例)に増加。補足的診断率は4.2/1,000(95%信頼区間:1.1~7.2/1,000、P=0.003、補足的診断率0)だった。

マンモグラフィの診断精度は0.78(95%信頼区間:0.67~0.87)で、併用検査では0.91(0.84~0.96)に上昇した(P=0.003、差0)。

超音波検査だけで発見された癌12例のうち11例(92%)は、大きさが中央値10mm(範囲は5~40mm、平均値:12.6[3.0]mm)で浸潤性だった。9病変のうち8例(89%)は、リンパ節転移陰性と報告された。

診断に必要なすべての検査を終えてからの生検勧告の陽性的中率は、マンモグラフィが84例中19(22.6%、 95%信頼区間:14.2~33%)、超音波が235例中21(8.9%、5.6~13.3%)、併用検査は276例中31(11.2%、7.8~15.6%)だった。

研究グループは「マンモグラフィに超音波検査1回を加えることで、高リスク女性の乳癌診断率は上がるが、実質的に偽陽性の数も増加する」と指摘している。

(朝田哲明:医療ライター)