難治性多発性骨髄腫、新規CD38標的薬が有望/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2015/09/07

 

 有効な治療選択肢がほとんどなく治療がきわめて困難な難治性の多発性骨髄腫の患者に対して、daratumumabは単剤で良好な安全性プロファイルを示し、有望な効果を発揮することが、オランダ・アムステルダム自由大学医療センターのHenk M Lokhorst氏らの検討で明らかとなった。プロテアソーム阻害薬や免疫調節薬は多発性骨髄腫の転帰を改善するが、多くの患者が再発し、再発後の予後はきわめて不良である。一方、多発性骨髄腫細胞で過剰発現がみられるCD38は、本疾患の治療標的となる可能性が示唆されている。daratumumabは、CD38を標的とするヒトIgG1κモノクローナル抗体で、前臨床試験では多彩な機序を介してCD38発現腫瘍細胞の標的細胞死を誘導することが確認されていた。NEJM誌オンライン版2015年8月26日号掲載の報告。

用量漸増試験30例と用量拡大試験72例で評価
 研究グループは、難治性多発性骨髄腫患者に対するdaratumumabの有用性を検討する第I/II相試験を行った(Janssen Research and Development社などの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、ECOG PSが0~2で、免疫調整薬やプロテアソーム阻害薬、化学療法薬、自家造血幹細胞移植などによる治療後に再発またはこれらのうち2つ以上の前治療歴のある難治性の多発性骨髄腫患者であった。

 用量漸増試験では、daratumumabの0.005~24mg/kgまでの10種の用量を設定し、最も低い2種の用量は1+3デザインで、それ以外の8種の用量は3+3デザインで評価した。初回投与後、安全性と薬物動態の評価を行うために3週間のウォッシュアウト期間を置き、その後は週1回、合計6回の投与を行った(治療期間8週)。

 用量拡大試験では、8mg/kgが3種、16mg/kgが2種の合計5種の投与スケジュールの評価を行った。8mg/kg投与群は、週1回で8回、月2回で8回、その後は月1回投与した。16mg/kg投与群は、初回投与後、薬物動態データの収集のために3週間のウォッシュアウト期間を置き、週1回で7回、月2回で7回、その後は月1回投与した。治療期間はいずれも最長で24ヵ月であった。

 2008年3月27日~2015年1月9日までに登録された患者のデータを解析した。用量漸増試験には32例が、用量拡大試験には72例が登録された。

MTDは同定されず、16mg/kg投与で全奏効率36%、PFSは5.6ヵ月
 用量漸増試験では、用量制限毒性(DLT)が0.1mg/kgで1例(Grade 3の貧血)、1mg/kgで1例(Grade 3のAST上昇)に発現したが、24mg/kgまで安全に増量され、最大耐用量(MTD)は同定されなかった。

 用量拡大試験の72例のうち、8mg/kg投与群が30例(年齢中央値59歳、女性9例)、16mg/kg投与群は42例(64歳、15例)であった。診断後の経過期間中央値は5.7年、前治療数の中央値は4(範囲:3~10)だった。

 このうち難治性病変の患者は79%であり、プロテアソーム阻害薬と免疫調節薬に不応性の患者は64%、ボルテゾミブとレナリドミドに不応性の患者も64%含まれ、76%は自家造血幹細胞移植を受けていた。

 用量拡大試験における注射関連反応の発現率は71%であったが、Grade 3の1例を除きGrade 1~2であり、注射関連反応による治療中止例はなかった。また、用量依存性の有害事象は認めなかった。

 Grade 3/4の有害事象は、8mg/kg投与群の53%、16mg/kg投与群の26%にみられ、肺炎が5例、血小板減少が4例で、好中球減少、白血球減少、貧血、高血糖が各2例に認められた。重篤な有害事象はそれぞれ40%、33%にみられ、感染症関連イベントが17%、10%と最も高頻度であった。

 用量漸増試験の4~24mg/kg投与の12例中4例で部分奏効(PR)が達成され、持続的な臨床的奏効が観察された。また、用量拡大試験では、8mg/kg投与群はPRが3例で全奏効率は10%であり、16mg/kg投与群は完全奏効(CR)が2例、最良部分奏効(very good PR)が2例、PRが11例で得られ、全奏効率は36%であった。

 16mg/kg投与群の無増悪生存期間(PFS)中央値は5.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.2~8.1)であり、奏効例のうち12ヵ月時に病勢が進行していなかった患者の割合は65%(95%CI:28~86)だった。

 著者は、「daratumumab(16mg/kg)単剤療法は、標準治療に不応となった患者が多く含まれる集団で、経時的に深まる持続的な奏効をもたらし、奏効例の1年PFSは65%に達した。また、PR以上の患者では全般に骨髄中の形質細胞が著明に低下した」とまとめ、「本薬の治療標的や作用機序は既存の治療法とは異なるものである」としている。

(菅野守:医学ライター)