高齢の心筋梗塞例でのICDの有用性/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2015/07/06

 

 急性心筋梗塞(AMI)発症後に左室駆出率(EF)の低下がみられる高齢患者では、植込み型除細動器(ICD)の装着例は非装着例に比べ2年死亡率が良好であることが、米国・デューク大学医療センターのSean D Pokorney氏らの調査で示された。ACCF/AHAガイドラインでは、心筋梗塞(MI)患者における心停止による突然死の1次予防として、MI発症後40日以上、至適な薬物療法を行っても、EF<35%の場合にICDの装着を推奨している。一方、とくにMIの日常診療ではICDが十分に活用されていないことを示唆するエビデンスがあり、またMIやその結果としての虚血性心筋症は加齢に伴って増加するが、高齢患者におけるICDの有用性については議論があるという。JAMA誌2015年6月23・30日号掲載の報告。

約1万例でICD装着と死亡の関連を後ろ向きに評価
 研究グループは、EFの低下がみられる高齢MI患者におけるICD装着と背景因子、死亡との関連を後ろ向きに評価する観察研究を行った。

 2007~2010年に、米国の441施設で治療を受けた、MI発症後にEFが<35%に低下した65歳以上のメディケア受給者1万318例のデータを後ろ向きに解析した。ICD装着歴のある患者は除外した。

 ICD装着の適格例におけるMI発症後1年以内のICD装着の有無とその関連因子を評価し、ICD装着の有無別に2年死亡率を比較した。フォローアップ期間中央値は718日(四分位範囲:372~730日)だった。

 全体の年齢中央値は78歳(四分位範囲:72~84)で、65%が非ST上昇型MI(NSTEMI)であり、75%が入院中に血行再建術を受けた。1年以内のICD装着率は8.1%(95%信頼区間[CI]:7.6~8.7)で、入院からICD装着までの期間中央値は137日、血行再建術施行例では115日だった。

2年死亡リスクが36%低下、ICD装着率改善の研究を
 MI発症後1年以内のICD装着例(785例)はICD非装着例(9,533例)に比べ、年齢が若く(74 vs.78歳、p<0.001)、女性が少なく(30 vs.47%、ハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.52~0.73、p<0.001)、末期腎臓病例が少なかった(9 vs.20%、0.57、0.43~0.75、p<0.001)。

 一方、MI発症後1年以内のICD装着例は、冠動脈バイパス術(CABG)施行歴のある患者が多く(31 vs.20%、HR:1.49、95%CI:1.26~1.78、p<0.001)、心筋トロポニンのピーク値の中央値が高かった(正常上限の85倍 vs.51倍、1.02、1.01~1.03、p<0.001)。

 また、院内心原性ショック発症率(13 vs.9%、HR:1.57、95%CI:1.25~1.97、p<0.001)や、退院後2週間以内の心臓関連の追加処置(30 vs.20%、1.64、1.37~1.95、p<0.001)の頻度が高かった。

 1年以内のICD装着例は非ICD装着例に比し、2年死亡率が有意に低下した。すなわち、ICD装着例の死亡率は100人年当たり15.3件(128件/838人年)で、非ICD装着例は26.4件(3,033件/1万1,479人年)であり、補正後HRは0.64(95%CI:0.53~0.78)と、ICD装着例で有意に良好であった。

 著者は、「MI発症後のEFが低くICDの装着が適切と考えられた高齢患者のうち、1年以内に実際にICDを装着したのは10例中1例にも満たなかったが、これらICD装着例ではリスク補正2年死亡率が有意に改善されていた」とまとめ、「適格例のICD装着率を向上させるエビデンスに基づくアプローチを確立するために、さらなる研究を進める必要がある」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)