アログリプチン、心不全リスク増大せず:EXAMINE試験の事後解析結果/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2015/03/25

 

 2型糖尿病で直近に急性冠症候群(ACS)を発症した患者について、DPP-4阻害薬アログリプチン(商品名:ネシーナ)は心不全リスクを増大しないことが示された。フランス・ロレーヌ大学のFaiez Zannad氏らがEXAMINE試験の事後解析を行い明らかにした。同試験では、2型糖尿病で直近にACSを発症した患者の主要有害心血管イベント(MACE)について、アログリプチンがプラセボに対して非劣性であることが示された。しかし、他のDPP-4阻害薬試験で院内心不全の過剰な発生に対する懸念が報告され、研究グループは本検討を行った。Lancet誌オンライン版2015年3月9日号掲載の報告より。

EXAMINE試験を事後解析して心不全リスクを評価

 EXAMINEは、2009年10月~2013年3月に49ヵ国898施設から被験者を登録して行われた多施設共同無作為化二重盲検試験であった。被験者は、2型糖尿病と直近15~90日以内にACSイベントを経験した患者で、糖尿病と心血管疾患予防のためアログリプチンまたはプラセボ+標準治療に無作為に割り付けられた。

 事前規定の探索的拡張MACEエンドポイントは、全死因死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症による緊急血行再建術、および心不全による入院であった。

 事後解析では、心血管死亡と心不全入院について、試験開始時の心不全歴および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値により評価した。また、試験開始~6ヵ月時のN末端プロBNP(NT-pro-BNP)値の変化についても評価した。

アログリプチンの心血管死亡と心不全入院の複合イベント発生はプラセボと同等

 5,380例の患者が、アログリプチン群(2,701例)またはプラセボ群(2,679例)に割り付けられた。追跡期間は中央値533日(IQR:280~751日)であった。

 探索的拡張MACEエンドポイントの発生は、アログリプチン群433例(16.0%)、プラセボ群441例(16.5%)の患者に認められた(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.86~1.12)。

 初発の心不全入院の発生は、アログリプチン群とプラセボ群それぞれ85例(3.1%)、79例(2.9%)であった(HR:1.07、95%CI:0.79~1.46)。

 事後解析の結果、心血管死亡および心不全入院の複合イベントへのアログリプチンの影響は認められず(HR:1.00、95%CI:0.82~1.21)、結果についてベースライン時のBNP値による違いはみられなかった。NT-pro-BNP値の変化は、両群とも有意かつ同等に減少した。

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コメンテーター : 吉岡 成人( よしおか なりひと ) 氏

NTT東日本札幌病院 院長

J-CLEAR評議員