再発多発性骨髄腫へのカルフィルゾミブ上乗せ~第III相試験/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2014/12/24

 

 多発性骨髄腫の再発例の治療において、カルフィルゾミブ(carfilzomib)を標準治療のレナリドミド+デキサメタゾン療法に加えると、無増悪生存期間(PFS)が9ヵ月近く延長することが、米国・メイヨー・クリニックのA Keith Stewart氏らが行ったASPIRE試験で示された。多発性骨髄腫患者の生存率は改善しているが、再発率は依然として高く、新たな治療アプローチが求められている。カルフィルゾミブは、構成型プロテアソームと免疫型プロテアソームに選択的かつ不可逆的に結合するエポキシケトン型プロテアソーム阻害薬であり、これら3剤の併用療法は第I/II相試験でその有効性が確認されている。NEJM誌オンライン版2014年12月6日号掲載の報告。

上乗せによるPFS改善効果を無作為化試験で評価
 ASPIRE試験は、再発多発性骨髄腫に対する標準治療へのカルフィルゾミブの上乗せ効果を評価する非盲検無作為化第III相試験(資金提供:Onyx Pharmaceuticals社)。対象は、1~3レジメンの前治療歴のある多発性骨髄腫患者で、一定の条件を満たせばボルテゾミブ治療歴やレナリドミド+デキサメタゾン療法歴のある患者の参加も許容された。

 被験者は、カルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン療法を行う群またはレナリドミド+デキサメタゾン療法を施行する群(対照群)に無作為に割り付けられた。治療は、患者の希望による中止、病勢進行または許容されない毒性が発現するまで継続することとした。

 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であり、intention-to-treat解析が行われた。副次的評価項目には全生存期間(OS)、全体の奏効率(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])、奏効期間などが含まれた。

PFS中央値:26.3 vs. 17.6ヵ月、OS、奏効率、QOLも良好
 2010年7月~2012年3月までに、北米、ヨーロッパ、中東から792例が登録され、カルフィルゾミブ群に396例、対照群にも396例が割り付けられた。全体の年齢中央値は64.0歳、前治療レジメン数中央値は2.0であり、ボルテゾミブ治療歴は65.8%、レナリドミド治療歴は19.8%に認められた。

 PFS中央値は、カルフィルゾミブ群が26.3ヵ月であり、対照群の17.6ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.57~0.83、p=0.0001)。事前に規定されたサブグループのすべてで、PFS中央値に関するカルフィルゾミブ群のベネフィットが認められた。

 中間解析時の2年OSは、カルフィルゾミブ群が73.3%、対照群は65.0%であり、OS中央値には両群とも到達していなかったが、カルフィルゾミブ群で良好な傾向がみられた(HR:0.79、95%CI:0.63~0.99、p=0.04)。この結果は、事前に規定された中間解析時のOSによる試験中止基準を満たさなかった。

 全体の奏効率は、カルフィルゾミブ群が87.1%、対照群は66.7%であり、有意な差が認められた(p<0.001)。CR率はそれぞれ31.8%、9.3%と、カルフィルゾミブ群が有意に優れた(p<0.001)。奏効までの平均期間はそれぞれ1.6ヵ月、2.3ヵ月、奏効期間中央値は28.6ヵ月、21.2ヵ月であった。また、健康関連QOLもカルフィルゾミブ群で有意に改善した(p<0.001)。

 カルフィルゾミブ群では、対照群よりも5%以上頻度の高い有害事象として、低カリウム血症、咳嗽、上気道感染症、下痢、発熱、高血圧、血小板減少、鼻咽頭炎、筋攣縮が認められた。Grade 3以上の有害事象の発症率は、カルフィルゾミブ群が83.7%、対照群は80.7%であり、重篤な有害事象の発症率はそれぞれ59.7%、53.7%であった。有害事象による治療中止は15.3%、17.7%に認められた。

 とくに注目すべきGrade 3以上の有害事象として、呼吸困難(2.8 vs. 1.8%)、高血圧(4.3 vs. 1.8%)、急性腎不全(3.3 vs. 3.1%)、心不全(3.8 vs. 1.8%)、虚血性心疾患(3.3 vs. 2.1%)がみられた。治療関連死はそれぞれ6例、8例であった(心筋梗塞、心不全、敗血症など)。

 著者は、「カルフィルゾミブの追加により病勢進行と死亡のリスクが31%低減し、PFS中央値が8.7ヵ月延長した」とまとめ、「移植を行わない場合のPFS中央値が、これに匹敵するレジメンはほかにない」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)