肥満者の降圧治療、心血管効果に差はない/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2014/11/17

 

 降圧治療の心血管イベントへの影響は、痩せている患者と肥満患者で、降圧薬の選択によって大きく変わることはほとんどないことが示された。オーストラリア・シドニー大学のAndrew Ying氏らが、無作為化試験22試験・13万5,715例の被験者データをメタ解析した結果、報告した。本検討は、標準体重の人と比べて肥満者の降圧による心血管ベネフィットが、選択した薬によって異なるのではないかとの仮説に基づき行われたものであった。Lancet誌オンライン版2014年11月4日号掲載の報告より。

22試験13万5,715例のデータを分析
 研究グループは、降圧治療の心血管リスクに対する影響について、ベースライン時のBMI値で分類した患者間で比較を行った。
 Ovid Medline、Embaseなどを介して1966年1月1日~2014年5月1日に発表された降圧治療に関する無作為化試験で、BMI値の主要心血管イベントまたは死亡への交互作用を報告していたものを特定し、試験の被験者個人データを用いて、種々のクラスの降圧レジメン間の比較を行った。比較検討は主要6つ(ACE阻害薬vs.プラセボ、Ca拮抗薬vs.プラセボ、強化療法vs.標準療法、ACE阻害薬vs.利尿薬またはβブロッカー、Ca拮抗薬vs.利尿薬またはβブロッカー、ACE阻害薬vs.Ca拮抗薬)について行った。また、BMI値の分類は、3分類(25未満、25~30未満、30以上)または連続変数分類で行った。

 検索の結果、分析は31の異なる治療比較が行われていた22試験・13万5,715例の個人データに基づき行われた。主要心血管イベントの発生例は、1万4,353件であった。

高度肥満者ではACE阻害薬が若干の保護効果を期待できる?
 主要6比較において、BMI値3分類間の保護効果が降圧薬のクラスによって異なるというエビデンスは示されなかった(すべての傾向p>0.20)。

 BMI値を連続変数として分析した場合、ACE阻害薬が、Ca拮抗薬(BMI値が5増すごとのハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.89~0.98、p=0.004)、利尿薬(同:0.93、0.89~0.98、p=0.002)よりも、わずかだが保護効果が認められた。

 一方でメタ回帰分析の結果、BMI値と収縮期血圧の低下におけるリスク低下との関連性は示されなかった。また、これまでの報告とは対照的に、BMI値と、Ca拮抗薬の有効性(vs.利尿薬)との相関も認めることができなかった。

 著者は、「結論として、今回の分析は、降圧治療効果の修正因子としてBMI値は影響はあるだろうとの洞察を十分に与えるものである。ACE阻害薬は最もBMI値によって異なる効果があると思われ、おそらくBMIがより高値な人では心血管保護効果がわずかだがあると思われる。しかし、十分な説得力のあるエビデンスはない。また、データ的に、臨床に変化を提供するような強力なケースはなく、とくに肥満患者向けにというクラスの降圧薬はない」とまとめている。

専門家はこう見る

コメンテーター : 桑島 巖( くわじま いわお ) 氏

J-CLEAR理事長

東都クリニック 高血圧専門外来