1型糖尿病へのインスリン、長時間型 vs. 中時間型/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2014/10/17

 

 成人1型糖尿病向けには、長時間作用型(持効型溶解)インスリンが中時間作用型(中間型)インスリンに比べ、血糖コントロール効果が高く、重度低血糖症といった有害事象も少なく、有効性、安全性に優れることが示された。ただし、HbA1c値の差はわずかであった。カナダのセント・マイケルズ病院Andrea C. Tricco氏らが、39件の試験について行ったシステマティック・レビューとネットワーク・メタ解析の結果、報告した。結果を踏まえて著者は「患者および担当医は、インスリン製剤の選択を、好み、コストそして入手のしやすさで見直すべきであろう」と述べている。BMJ誌オンライン版2014年10月1日号掲載の報告より。

2013年1月までの無作為化試験やコホート試験などを再調査
 研究グループは、Medline、Cochrane Central Register of Controlled Trialsなどを基に、2013年1月までに発表された成人1型糖尿病向けの持効型溶解インスリン(グラルギン、デテミル)と、中間型インスリン(NPH、レンテ)に関する無作為化試験やコホート試験、費用対効果を検討した試験について、システマチック・レビューとネットワーク・メタ解析を行った。

 両者の安全性、有効性、費用対効果について比較した。

持効型はNPH 1日1回と比べてHbA1c値を有意に低下
 6,501件の試験タイトルや抄録、190試験の論文全文をスクリーニングにかけ、39試験について分析を行った。そのうち、無作為化試験は27件(被験者総数:7,496例)だった。

 ネットワーク・メタ解析の結果、グラルギン(1日1回)、デテミル(1日1回)、デテミル(1日1~2回)の投与は、NPH(1日1回)の投与に比べてHbA1c値を有意に低下した。無作為化試験26件を含んだ同解析における平均差はそれぞれ-0.39%、-0.26%、-0.36%だった。

 重度低血糖症については、無作為化試験16件を含む同解析の結果、デテミル(1日1~2回)がNPH(1日1~2回)に比べ、発症リスクが有意に低かった(オッズ比:0.62、95%信頼区間:0.42~0.91)。

 体重増については、無作為化試験13件を含む同解析の結果、デテミル(1日1回)はNPH(1日1~2回)に比べ増加幅が大きかった(平均差:4.04kg)。一方で、デテミル(1日1~2回)vs. NPH(1日1回)、またグラルギン(1日1回)vs. NPH(1日1回)では、いずれもNPH群の体重増加幅が大きかった(それぞれの平均差:-5.51kg、-5.14kg)。

 費用対効果については、14件のデテミルvs. NPH試験のうち3件でデテミルが、8件のグラルギンvs. NPH試験のうち2件でグラルギンが、費用対効果が高いという結果であった。費用対効果の解析からは、デテミルとグラルギンはNPHよりも費用が高く、効果も優れるというものだった。またグラルギンvs. デテミルの費用対効果は検討した2試験ともグラルギンのほうが優れないというものだった。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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コメンテーター : 住谷 哲( すみたに さとる ) 氏

社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会泉尾病院 糖尿病・内分泌内科 主任部長

J-CLEAR評議員