塩分摂取と死亡リスクの関係はJカーブ/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2014/08/25

 

 心血管の健康に最適なナトリウム摂取量は3~6g/日(食塩換算量:7.5~15.0g/日)であり、これより多くても少なくても、死亡や心血管イベントのリスクが高くなることが、カナダ・マックマスター大学のMartin O’Donnell氏らが行ったPURE試験で示された。世界の心血管疾患予防ガイドラインが推奨するナトリウム摂取量は1.5~2.4g/日だが、これを達成するには、ほとんどの人が食生活の根本的な変更を迫られると考えられる。ナトリウム摂取量の減少が心血管疾患リスクの低下をもたらすことを証明した大規模無作為化試験はなく、前向きコホート試験の結果からは一致した見解は得られていないという。NEJM誌2014年8月14日号掲載の報告。

推定排泄量を摂取量の代替指標とし、約10万人で検討
 PURE(Prospective Urban Rural Epidemiology)試験は、尿中ナトリウムおよびカリウム排泄量と、死亡、心血管疾患イベントの関連を調査する前向きコホート試験。対象は、17ヵ国628地域に居住する35~70歳の一般住民であった。

 朝の空腹時尿検体を採取して24時間ナトリウムおよびカリウム排泄量を推定し、摂取量の代替指標とした。尿中ナトリウムおよびカリウムの推定排泄量と、死亡および主要心血管イベントの複合アウトカムの関連を評価した。

 2003年1月に登録が開始された。今回の解析には、10万1,945例(全体の48.4%がアジア人で、全体の42%は中国人)のデータを用いた。平均推定24時間ナトリウム排泄量は4.93g/日、カリウム排泄量は2.12g/日であった。平均血圧はナトリウム摂取量が多いほど高かった(p<0.001)。

カリウム排泄量は多いほどリスクが低下
 平均フォローアップ期間3.7年で、3,317例(3.3%)に複合アウトカムが発生した。死亡は1,976例で、そのうち650例が心血管死であった。857例が心筋梗塞、872例が脳卒中、261例が心不全を来した。

 推定ナトリウム排泄量4.00~5.99g/日を基準とすると、排泄量≧7.00g/日では複合アウトカムのリスクが有意に上昇し(オッズ比[OR]:1.15、95%信頼区間[CI]:1.02~1.30)、死亡(1.25、同:1.07~1.48)および主要心血管イベント(1.16、同:1.01~1.34)のリスクもそれぞれ有意に上昇していた。

 推定ナトリウム排泄量高値と複合アウトカムの関連は、高血圧を有する参加者で最も強く(交互作用検定p=0.02)、排泄量が6.00g/日を超えるとリスクが上昇した(6.00~6.99g/日;OR:1.14、95%CI:1.00~1.30/≧7.0g/日;同:1.21、1.05~1.40)。

 推定ナトリウム排泄量が<3.00g/日の場合も、基準値(4.00~5.99g/日)に比べ複合アウトカムのリスクが有意に上昇した(OR:1.27、95%CI:1.12~1.44)。

 推定カリウム排泄量が<1.50g/日の場合と比較して、≧1.50g/日の場合に複合転帰のリスクが有意に低下した(1.50~1.99g/日;OR:0.86、95%CI:0.77~0.97/2.00~2.49g/日;同:0.81、0.73~0.91/2.50~3.00g;同:0.86、0.75~0.98/>3.00g/日;同:0.78、0.67~0.91)。複合アウトカムの発生に関して、ナトリウム排泄量とカリウム排泄量に交互作用は認めなかった(p=0.55)。

 著者は、「推定ナトリウム摂取量が3~6g/日より多い場合も少ない場合も、死亡および心血管イベントのリスクが増大した」とまとめ、「本試験はナトリウム摂取量の異なる群を疫学的に比較した調査であって、摂取量の減少が臨床アウトカムに及ぼす効果に関する情報を提供するものではない。それゆえ、意図的に摂取量を減らせばリスクが軽減するとのエビデンスとは解釈すべきでない」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)

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コメンテーター : 桑島 巖( くわじま いわお ) 氏

J-CLEAR理事長

東都クリニック 高血圧専門外来