多剤耐性結核患児へのフルオロキノロン投与は侵襲性肺炎球菌疾患を招く

提供元:ケアネット

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公開日:2008/04/10

 

 多剤耐性結核(MDRTB)に罹患した子どもの治療にフルオロキノロンを使用すると、レボフロキサシン(LVFX)非感受性肺炎球菌およびその院内伝搬に起因する侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)の発現を招くことが、Anne von Gottberg氏らGERMS-SA(南アフリカ)の研究グループによって明らかにされた。現在、抗生物質に対する肺炎球菌の耐性獲得が世界的な問題となっており、フルオロキノロンなど比較的新しい薬剤に対する耐性菌は、とくに市中肺炎の経験的治療(empiric treatment)において重要とされる。Lancet誌2008年3月29日号(オンライン版2008年3月21日付)掲載の報告。

IPD例の中からLVFX非感受性肺炎球菌保有例を同定

 南アフリカでは、2000~2006年に全国的な積極的サーベイランスを行っており、2003年には7州に導入された15の拠点病院においてサーベイランスを強化した。その結果、2万1,521例のIPDが同定された。

 スクリーニングによりオフロキサシン耐性菌の保菌者1万9,404例(90%)を同定し、これらの患者においてLVFXの最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。MIC≧4mg/Lを、LVFX非感受性と定義した。LVFX非感受性肺炎球菌に起因するIPDが検出された2つの結核専門施設で、65例の患児において肺炎球菌の鼻咽頭保菌を評価した。

LVFX非感受性菌によるIPDと結核治療歴、院内感染率が関連

 15歳以下の子どものうちLVFXに非感受性のIPDは12例であった。すべての分離株がリファンピシンに耐性を示した。このうち11例の転帰が判明し、5例(45%)が死亡した。

 LVFXに感受性の肺炎球菌の感染児のうち結核治療歴を有する者の割合は18%(396/2,202例)であったのに対し、非感受性菌感染児では89%(8/9例)であり、非感受性菌によるIPDと結核治療歴の関連が示唆された(相対リスク:35.78、p<0.0001)。

 また、感受性菌感染児の院内感染率は4%(109/2,709例)であったのに対し、非感受性菌感染児では80%(8/10例)であり、非感受性菌によるIPDと院内感染にも関連が認められた(相対リスク:88.96、p<0.0001)。

 肺炎球菌の保菌者35例のうち31例(89%)がLVFX非感受性の菌を有していた。

 これらの知見により、Gottberg氏は「子どものMDRTBの治療にフルオロキノロンを使用すると、LVFX非感受性肺炎球菌およびその院内伝搬に起因するIPDの発現を招くことが示唆された」と結論している。

(菅野守:医学ライター)