ホモ接合性も発癌リスク評価やマネジメントにおいて重要

提供元:ケアネット

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公開日:2008/04/08

 

癌は、生殖細胞変異と体細胞イベントから生じる多重遺伝子性疾患だが、癌組織におけるヘテロ接合消失(LOH)を研究していた米国クリーブランド・ゲノム医学研究所のGuillaume Assie氏らは「生殖細胞の癌組織には、ホモ接合性(homozygosity)の傾向を持つ特異的な遺伝子座が存在する」として、ホモ接合性が発癌リスク評価やマネジメントで重要な素因となる可能性を示唆した。JAMA誌2008年3月26日号より。

乳癌、前立腺癌、頭頸部癌患者385例を調査




Assie氏らは、種類が異なる固形腫瘍を有する一連の患者群と、住民ベースの対照群とを比較して、生殖細胞のホモ接合性の頻度を測定した。癌患者群は3タイプの癌計385例(乳癌147例、前立腺癌116例、頭頸部癌122例)。腫瘍のDNAを取り出し、全ゲノム(345-マイクロサテライトマーカー)についてLOHを分析した。

主要評価項目は、癌患者群と対照群それぞれのホモ接合性の頻度、および高度ホモ接合性遺伝子座における癌性体細胞のLOHの頻度とした。

共通する16遺伝子座でホモ接合性が有意に増加




癌患者群は対照群と比較して、生殖細胞のホモ接合性の頻度が有意に増加しており、3タイプの癌で共通する16遺伝子座を確認した(P<0.001)。これら16遺伝子座の体細胞イベント頻度を分析(LOH頻度を測定)したところ、LOH平均値58%(SD 4.2%)で、対照群(ホモ接合性の増加が見られなかった197マーカー)の生殖細胞では50%(SD 7.5%)(P<0.001)。ゲノム全体でも同様の相関がみられた(r=0.46、95%信頼区間:0.37~0.53、P<0.001)。

さらに、白人の肺癌205例のデータから、単一ヌクレオチド遺伝子多型において、高頻度の生殖細胞のホモ接合性と、特異的な遺伝子座の関係も確認(P<0.05~P<0.001)。ゲノム全体の生殖細胞のホモ接合性とLOH頻度間の相関も同様の傾向が確認された(r=0.21、95%信頼区間:0.18~0.24、P<0.001)。

Assie氏らは「4タイプの固形腫瘍で、生殖細胞のホモ接合性の増加が特定の遺伝子座で生じていることが確認された。それら遺伝子座で生殖細胞のヘテロ接合が起きていると、同一の腫瘍遺伝子座で、LOH対立遺伝子不均衡が高頻度に生じていた」とまとめ、発癌リスク評価とマネジメントにおいて、生殖細胞のホモ接合性/ヘテロ接合の相対度数を知ることの重要性を示唆している。

(朝田哲明:医療ライター)