消化不良にPPIによる胃酸分泌抑制は適切な初期治療

提供元:ケアネット

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公開日:2008/04/04

 

プライマリ・ケアにおける消化不良の初期治療では、ピロリ菌の検査・除菌とプロトンポンプ阻害薬(PPI)による胃酸分泌抑制の費用効果および症状抑制効果は同等であり、PPIは適切な治療戦略であることがMRC-CUBE試験の結果により示された。BMJ誌2008年3月22日号(オンライン版2008年2月29日号)で、英国Birmingham大学プライマリ・ケア科のBrendan C Delaney氏が報告した。英国の消化不良の治療ガイドラインでは、上部消化管の腫瘍が疑われる徴候がない場合は、これら2つの管理法が推奨されている。

80ヵ所のGP施設に699例を登録




MRC-CUBE試験の研究グループは、プライマリ・ケアにおける消化不良の初期治療としてのピロリ菌の検査・除菌と胃酸分泌抑制の費用効果を評価するための多施設共同無作為化対照比較試験を実施した。

英国の80ヵ所のGP施設に、年齢18~65歳で上腹部痛、胸やけ、あるいはその双方が見られ、悪性腫瘍を疑わせる徴候のない699例が登録された。13C尿素呼気試験の陽性例に1週間の除菌治療を行う群あるいはPPI投与のみを行う群に無作為に割り付け、その後の患者管理は各GPの裁量に任された。

費用効果はEQ-5Dを用いて生活の質で調整した生存年数(QALY)ごとのコストを算出し、消化不良症状に対する1年後の効果は略式Leeds 消化不良質問票のスコア、医療資源の使用度、患者満足度で評価した。

ピロリ菌検査・除菌とPPIの費用効果は同等




ピロリ菌検査には343例が割り付けられ、100例が陽性であった。そのうち78%が除菌に成功した。PPI治療には356例が割り付けられ、28日間にわたり治療が行われた。

1年後の時点で、両群間にQALY、コスト、消化不良症状に差は認めなかった。初診時のピロリ菌の検査・除菌のコストは、1年後にはコスト抑制効果によって相殺されてPPI治療群と同等となった。

Delaney氏は、「消化不良の初期治療におけるピロリ菌検査・除菌とPPI投与の費用効果は同等であった。PPIによる胃酸分泌抑制はプライマリ・ケアの初期治療において適切な治療戦略である」と結論している。また、同氏は「全体として両治療群のコストに差はないので、初診時にピロリ菌の検査を行うか、持続的な症状の評価のみを行うかは、各GPが個々の患者と相談して決めるべき」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)